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上司にコーチングが必要だと感じた時
組織の上層では、逆説的な現象が見られる。リーダーは昇進するほど、率直なフィードバックを得にくくなるのだ。注目度や責任の重みが増すにつれ、見えなくなるものも増えていく。同僚は異議を唱えることをためらい、部下は意見を選んで伝える。取締役会は行動よりも成果を重視する。その結果、どれだけ有能なCEOでも、次第に周囲から隔絶された存在になっていく。
上司や経験豊富なエグゼクティブに対して、「コーチをつけてはどうか」と示唆することは、キャリアを危うくする行為に思えるかもしれない。しかし実際には、コーチングの恩恵を受けるのは自分だけではないと気づく人が、筆者のクライアントの中でも少なくない。たとえば、あるクライアントはコーチングを通じて透明性に関するリーダーシップ能力を高めたが、その過程で上司にも同様の盲点があることに気づいた。新たな気づきを得た後も、上司のその弱点が自分の成果の発揮に影響を及ぼし続けていた。そこで彼女は、みずからの信頼やキャリアを損なうことなく、上司にコーチングを受けるよう促す方法を模索するようになった。
権力関係は無視できない現実である。地位が高いほど、リーダーはみずからの権威を慎重に守ろうとする。コーチングの話題を持ち出すだけでも、批判や越権、場合によっては不服従と受け取られかねない。重要なのは、コーチングを必要とするリーダー自身が、あたかも最初から自分の発想であったかのように、みずから選び取ったと感じられる状況をつくることだ。
本稿では、戦略と共感、そして節度を持って対話を設計するための5つのステップを紹介する。これらは、政治的に安全であると同時に、心理的にも効果があるものだ。
1. 真の障壁を理解する
コーチングを提案する前に、何が障壁となっているのかを見極め、どこで抵抗が生じるかを予測する必要がある。コーチングに対する抵抗は通常、次の3つのカテゴリーに分かれ、それぞれに応じたアプローチを取る必要がある。
(1)自尊心や自己認識の防衛
卓越した成功を収めてきたエグゼクティブの中には、それ自体が「助けは不要である」ことの証明だと考える人もいる。コーチングを弱さと結びつけたり、何を言われるかは「すでにわかっている」と思い込んだりする。こうしたリーダーにとっての障壁は、自己認識に関わるものだ。コーチングは、「自分は助けを借りずにここまで来たのだから、いまさら必要ない」というストーリーを脅かすものとして捉えられる。
(2)コーチングに対する誤解
多くのリーダーは、いまだにコーチングを業績不振者や問題を抱えたリーダー、自己認識に欠ける人物のための改善の手段と見なしている。組織において、360度評価や苦情への対応としてのみコーチングが導入されてきた場合、そのスティグマは文化として強化される。
(3)時間と過重負荷
特にコーチングを受けた経験がなく、その価値を定量化できないエグゼクティブにとっては、「もう一つ会議を増やす」ことは想像しがたい。取締役会からのプレッシャーにさらされている場合や変革を主導している場合、あるいは危機対応の最中であれば、毎週1時間をコーチングに割くことは贅沢に感じられる。
障壁を誤って読み違えれば、働きかけは逆効果になりうる。たとえば、問題が自己認識にあるのに、コーチングのROI(投資利益率)に関するデータを提示しても意味はない。極度の過重負荷が問題であれば、名声やステータスを強調しても響かない。だからこそ、まずは傾聴し、パターンを観察し、それに応じてアプローチを調整することが重要だ。







