スマートフォンならではの
メリットを提供するために
言い換えれば、スマートフォンならではの方法でユーザーにサービスやツールを提供するのは、通常のウェブサイト上の情報提供とは異なるということだ。
「たとえばレストランを例に取ると、ウェブサイトで見たいのはメニューや料理の写真でしょう。一方スマートフォンではその場所が知りたい。ですから、単にウェブサイトの情報を要約するのではなく、価値を提供することが核になるのです。スマートフォンはマーケティングにこれまでにない新たな次元を与えているといえます」
ただ、スマートフォン・ユーザーが実際の店舗をまるでショールームのように使い、実際の購入はネット販売で行うという、小売業界にとっては頭の痛い問題もある。スペロ氏は、実店舗でのエクスペリエンスを深化させることが、問題を突破するカギになると言う。

「消費者は、どこにいても情報武装できます。忘れてならないのは価格の透明化。つまり、顧客はどこで買えば安いかを知っている。だから、最低価格を提示しなければ負けてしまうということです。とは言うものの、価格がすべてを決めるわけではありません。顧客とのつながりを新しい方法で確立することは可能なのです」
この点でスペロ氏が例に出すのはドラッグストアのチェーン、ウォルグリーンズだ。ウォルグリーンズでは、顧客からスマートフォンで処方箋の注文を受け、準備できるとスマートフォンにメッセージを送るという便利な仕組みを開発。これで顧客は店舗に足を向ける。いまや同社の処方箋注文の25%がモバイル経由だという。スターバックスも、店舗ロケーターや支払いをアプリ化し、店内のWiFiネットワークを通じて店舗でしか楽しめない音楽や動画を提供する。
「つまり、商品と価値をセットにして提供する。これはネット販売にはまねができません。他にも、同日配達や商品パッケージのカスタマイゼーションなども可能でしょう。要はエンパワーされた顧客に対して、実際の店舗だけが提供できる何かを考える必要があるということです」
じつは価格の透明化は、新たな方法による店員訓練も促している。競合的な価格を顧客に提示し、製品の保障やサービスについての情報を提供するなど、これからの店舗は、価格を超えて顧客に役に立つ存在としてアピールする必要があるのだ。