ユーザーの状況により
「何ができるか」が最重要
スマートフォンは、顧客とのタッチポイントやエンゲージメントについても新しい視点を与えてくれる。
「同じスマートフォンといっても、通勤中なのか、ランチ休憩中に素早く買い物を済ませたいのか、レストランを探そうとしているのかによって異なった文脈があり、心の状態も違います。すなわち、スマートフォンによる新しいパラダイムでは、テクノロジーが中心ではなくて、何ができるのかが重要なのです」
スマートフォンが提供する情報は、そうした文脈を汲み取ったものでなければならない。コンピュータで〈リーバイス・ジーンズ〉の色やスタイルをじっくり研究するユーザーも、モバイルでは、店までの道順や価格情報がほしい。
そうした要望を正しく理解し、エレガントにシンプルに情報を提供できれば言うことはない。動画など重いデータは避け、ロケーション情報を利用し、使い方が明快。それが目前の問題解決のために役立つスマートフォン・サイトの共通ルールだと、スペロ氏は強調する。
スマートフォン用サイトの必要性については理解が広まっているとして、では、モバイル・ウェブとアプリはどう使い分けるのが得策か。スペロ氏はこれもよく受ける質問という。回答はこうだ。

「アプリはエンゲージメント戦略には重要で、フォーチュン1000社の70%がモバイル用のアプリを出しています。ただし、アプリは顧客管理ツール(CRM)に似て、すでに関係が築かれた固定客向けのもの。一方、大方の新しい顧客はウェブで企業を見つけます。ですから、まずスマートフォン用のサイトをつくることが必須です」
スマートフォンのウェブサイトで顧客とのエンゲージメントを図り、アプリはそれにちょっとした機能やエンタテインメント性を追加するものという位置づけだ。ただし、空港でのチェックインに用いられるバーコード表示など、よりアプリに合った使い方もあるので、いずれは「どちらか」ではなく「どちらも」ととらえるのがいい。