最近の「ダイバーシティ」や「クロスカルチュラル」といった主張に耳を傾けると、経営にとって肝心かなめの統合についての理解がわりと浅薄な話が多いものです。「多様性は良いとしても、その統合は?」と突っ込むと、「グローバル・スタンダード」という名のアメリカ型のお作法に全面的に寄りかかっているだけのことが少なくありません。これでは「手のひらの上の多様性」です。従来の統合メカニズムで吸収できる多様性ならばいくらでも認めるけれども、統合できない多様性は認めないというわけです。

 以前しきりと叫ばれていた「コーポレート・ガバナンスはグローバル・スタンダードに合わせましょう」などという話は、その最たるものです。組織を構成する部分についてはいくらでもグローバルな多様性を認めるけれども、その統合の仕方については極めてドメスティックで一様。アメリカの企業経営にはそういう傾向があるようです。

 英語は単純なコミュニケーションの手段なので、グローバル・スタンダードに合わせる意味が大きいし、合わせないといまさらやっていけません。しかし、統合装置としての経営はグローバル・スタンダードに合わせる必要はありません。企業活動は究極的には差異を求めるものです。戦略の本質も違いをつくることにあります。他者と違うからこそ独自の価値を創ることができ、それが競争の中で長期の利益をもたらすわけです。

多様性から経営として成果をあげるために必要な視点

 統合の仕組みは経営そのものであり、独自の価値創造の根幹を支えるものの一つです。これからはグローバル化だ、多様性のマネジメントだといって、これまで培ってきたその企業なりの統合の仕方を全部ご破算にして(本当はそんなことは絶対にできないのですが)「グローバル・スタンダード」に移行してしまえば、元も子もありません。もはや経営の自己否定といってもよいでしょう。

 だからといって、「日本企業はあくまでもこれまでどおりの日本のやり方でいく」という路線、これも上手くありません。「グローバル・スタンダード」に対する批判としてこのような主張がしばしば出てくるのですが、「グローバル・スタンダード論」の裏返しになっているだけです。押しつけに終始し、上手くいかないことには変わりありません。

 多様性の増大はグローバル化の必然です。多様性のマネジメントは、多様性を受け入れるだけでなく、増大する多様性をどのように統合するかという問題であります。では、どうしたらよいのか。いうまでもなく、答えはひとつではありません。企業経営は常に特殊解を求めるという仕事なので、企業ごとにケースバイケースで最適なやり方が決まるとしか言いようがないのですが、ここでは2つほど重要だと僕が考える論点を指摘しておきたいと思います。