グローバル標準導入への道:
日本企業にとってのハードル
日本以外の国は、職務をベースとした人事制度が主流となっている。人事領域のグローバル化を進めていくにあたり、グローバル標準である職務をベースとした人事制度に合わせた方が、合理的・効率的であることは言うまでもない。
職務をベースとした人事制度がグローバル標準になってきた背景には、人種・性別・年齢による差別の撤廃という命題に、客観性・説明性が高い職務型の人事制度が合っていたこともあるが、グローバル化の中で、このような要素はますます重要となろう。また、日本で主流の「人・能力」をベースとした制度は、曖昧で属人的要素が入りやすく、高度成長や儒教の影響といった背景があった当時の日本にはマッチしたが、それも今や当てはまらない。
それではなぜ、未だに多くの日本企業がグローバル標準の制度に変えないのであろうか。
もちろん、職務型の人事制度にもデメリットがあり、それも理由の1つとなっている面はある。例えば、職務型の制度では、職務を定義して、それを元に等級や給与を決めるため、社員が決められた職務に固執する、といった問題が発生しやすい。また、急成長企業などでは、職務や組織がころころ変わるので、一度職務評価をしても、評価が変わるかもしれない、といった面もある。しかし、これらのデメリットは、さまざまな工夫により解消可能であり、決定的なボトルネックとは言えない。
むしろ大きな要因となっているのは、これまでの人事制度の運用と、その結果である。職能型であれ、職務型であれ、厳格に運用されていれば、結果として、等級や報酬に、それほど大きなギャップは生まれない。適材適所とは、能力と職務をマッチさせていくことであり、そのような運用がなされていれば、能力で評価しようが、職務で評価しようが、等級も報酬も、同じようになるはずである。問題は、曖昧かつ属人的な要素が入りやすい「職能型」の人事制度で、そのまま曖昧・属人的な運用をしてしまった場合である。