実は、企業の成長が鈍化した1990年以降、多くの日本企業の人事制度が、制度疲労を起こしていたにも関わらず、そのまま運用を続けたため、大きなひずみを抱えている。多くの企業で、社歴が長いというだけで、仕事に見合わない高い等級・報酬となっている社員が、かなりの割合で存在する。このような場合、職務をベースとした人事制度を導入すると、その人の等級や報酬が下がってしまい、本人のモチベーションダウンにつながる。
また、報酬を下げるにも限界があり、結局、調整給の支給などが必要で、一時的にコストアップとなってしまう。もちろん、逆に若手で能力が高く、抜擢により大きな仕事をやっているようなケースでは、等級も報酬が上がり、社内の活性化につながる。しかし、制度疲労を放置した「ツケ」があまりに大きいと、前述した課題も大きくなり、企業に二の足を踏ませる要因となっているのである。
もちろん、人事領域のグローバル化は、多くの企業にとって喫緊の課題であり、課題があるからと言って手をこまねいているわけにはいかない。今の制度・実態とのギャップと、必要性・必然性をにらみながら、例えば管理職にのみグローバル共通の人事制度を導入するなど、工夫は可能である。
人事領域のグローバル化推進には、グローバル共通のモノサシ・ツールが鍵となること、特に今回はその中でも「仕事(職務)」について述べてきた。人事の基本は「仕事(職務)」と「人」であるが、その前者を取り上げたわけである。次回は、「人」に関するグローバル共通のモノサシ・ツールについて、グローバル企業で行われている手法・事例を中心にご紹介したい。