プロジェクト主導型組織に変わるための10の質問に答える
Yaroslav Danylchenko/Stocksy
サマリー:激しい変化が続く今日のビジネス環境において、企業が持続的に価値を創造するには、プロジェクトを単なる例外的な取り組みではなく経営の中核に据える「プロジェクト主導型組織」(PDO)への転換が不可欠だ。従来の階層型組織からPDOへ移行することで、オペレーションの安定を保ちつつ迅速な変革が可能となる。本稿では、組織デザインや意思決定、ガバナンスなど、PDOの実践に向けた代表的な10の問いと回答を紹介する。

通常の活動と切り離して「プロジェクト」を実施するだけでは不十分

 リーダーたちは、プロジェクトを「従来の組織構造の下、通常の企業活動とまったく切り離された形で行われる取り組み」と捉える時代は終わった、と認識し始めている。常に激しい変化が起きている今日のビジネス環境において、戦略的プロジェクトは、企業が戦略を実行し、継続的に価値を生み出すための主要なメカニズムになっているのだ。

 しかし、こうした地殻変動は、経営幹部チームに根本的な問題を突きつけている。安定したオペレーションの継続性を確保する必要性と、絶え間ない変化が生み出す摩擦を避ける必要性とのバランスを、どのように取ればよいのか、という問いだ。

 優先順位の高いプロジェクトを迅速に前進させると同時に、社内に混乱を生み出すことを防ぐためには、どのような組織構造を採用すればよいのか。そして、これが最もいら立たしく感じる問題かもしれないが、通常は極めて高い能力を発揮する組織に、潤沢なリソースを注ぎ込んで鳴り物入りでプロジェクトを開始したにもかかわらず、プロジェクトが失敗する場合があるのはなぜなのか。

 筆者が行った研究では、こうした課題に対処するために全社規模で新しいモデルを採用している会社について調べた。そのモデルとは、プロジェクト主導型組織(PDO)と呼ばれるものだ。

 プロジェクト主導型組織は、組織デザイン、リーダーシップ、価値創造のあり方に関して新しいスタイルを採用すると同時に、リーダーたちが積極的に変革を主導できるようにすることを目的にしている。このモデルに関する筆者のフレームワークは、世界規模の企業変革に関する研究、企業でのフィールド調査、トップレベルのビジネススクールでエグゼクティブ教育を実施してきた20年以上の経験に基づくものである。

 先頃、筆者の新著Powered by Projects(未訳)の刊行を記念した『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)のイベントでは、プロジェクト主導型組織について多くの質問が寄せられたが、すべての質問に回答することはできなかった。そこで、本稿では、イベントで寄せられた質問を10個の問いに集約し、HBRの読者のために回答を示す。

 以下で取り上げる問いは、「オペレーションの安定を損なわずに変革を実行するには、どうすればよいのか」「プロジェクト主導型組織は、プロジェクトマネジャーにとって何を意味するのか」といったものだ。これらのテーマは、筆者の研究全般に沿ったものであり、コンサルティングや教育の場で企業の経営幹部たちからしばしば尋ねられる問いとも合致している。

 本稿では、それぞれの問いに対する回答の後に、「考えてみよう」というコーナーを設けた。そこで示した問いを検討することにより、企業幹部たちは、プロジェクト主導型組織のモデルを自社で実践するヒントを得られるだろう。

1. 真のプロジェクト主導型組織とはどのような組織なのか

 多くの経営幹部は、プロジェクト主導型組織というアイデアに魅力を感じる半面、それがどのようなものかを具体的にイメージしづらい。大半の企業はいまだに、財務、マーケティング、オペレーションといった事業部門を軸に構成されている。こうした組織構造の目的は、オペレーションの効率を高めることにある。たいてい、プロジェクトがその会社の仕事の進め方に大きな影響を及ぼすことはなく、既存の組織の枠外に存在している。