2026年、人々はAIを実際にどう使っているのか
Illustration by Clara San Millán
サマリー:1万2637件のユースケースを分析し、生成AIの利用が仕事から私生活、技術支援から感情面まで拡大していることが判明した。一方、認知的責任の委譲や過度な依存への懸念も高まり、企業での成果はいまだ限定的だ。

1万2637件のユースケースを分析

 生成AIが爆発的な勢いで登場してから、3年半が経った。この1年でも進歩は絶え間なく続いている。バイブコーディングが急速に広がり、企業はエージェント型ワークフローを受け入れ、チャットGPTを定期的に使うユーザーは9億人に達し、グーグル・ジェミニのユーザーは7.5億人を突破。オープンAIは最新の資金調達ラウンドで8520億ドルの評価額を記録した。

 AIの未来をめぐる熱狂と論争が渦巻く中、一つの問いが注目され続けている。人々は現在、このテクノロジーを実際にどのように活用しているのだろうか。これこそ、人間がAIとともにどう進化しているのかを追跡する筆者と共同創業者であるサラ・ビウクによる長期的調査、「AI イン・ザ・ワイルド」の焦点である。

 2024年、2025年から続く第3回目となる今回の年次調査では、1万2637件のユースケースを分析した。このデータセットは過去2年のものよりも桁違いに充実している。2025年3月~2026年2月にかけて、より幅広いオンラインソースから収集した約5万件の記録からなるデータベースを構築した。従来の情報源であるレディット、クオーラおよび関連記事に、今回はリンクトイン、ティックトック、ユーチューブも加えている(この「ソーシャルリスニング」の手法には長所と短所があることを、以前の記事で詳述している)。その後、人間とAIのハイブリッドシステムを用いてユースケースを特定した。

 余談だが、このプロセスにおいて人間の判断が依然として不可欠であることは特筆に値する。最先端のモデルでスクリプトの改良を何百回も重ねたにもかかわらず、対象テキストが真正かつ価値と意味のあるAIユースケースなのか否かを評価するタスクにおいて、AIはいまだに完璧からはほど遠いことが明らかになった。

 2026年は生成AIがますます幅広い用途で利用されていることが判明した。ただし、いくつか留意点がある。

 年ごとの傾向の違いは、明確な切り替わりというより、重点の移り変わりとして理解すべきだ。2025年は感情面でのユースケースが技術的なユースケースを上回ったが、それ以前から感情面での用途は多く存在しており、現在も技術的用途は多く残っている。ユーザー全体のパイが拡大していることを忘れてはならない。今年、ある用途で使う人が増えたからといって、他の人々が別の用途で使うのをやめたわけではない。

 なお、このデータセットの大半は、私生活と仕事の両方において、何らかの目的でAIを利用している個人に関するものである。

 では、どのような変化が見られたのか。利用の幅と深さが広がるにつれて、人々が自分の認知的責任をAIに譲り渡しているのではないかという不安も高まっている。並行して、感情面のサポートを得るために、テクノロジーに依存しすぎているのではないかとの懸念もある。ビジネス界では現在のところ、ゲームチェンジャーとなるような成果よりも、限定的な成果をもたらす活動が多く見られる。

 過去1年における人々のAI利用状況は、以下の通りだ。

「シンクスロップ」

 新しいAIモデルは人間の思考を模倣することに長けているため、私たちは考える作業をAIに任せてしまいたくなる。これは問題となりかねない。

 2026年に上位に入ったユースケースの少なくとも4分の1──セラピー/話し相手(1位)、人間関係のアドバイス(7位)、意思決定の強化(13位)、生活を整える(14位)、メールの下書き(42位)、アイデアの創出(47位)など──において、人々は思考の一部をAIに委ねている。こうしたAIの使い方は憂慮すべきとの議論がある。第1に、この種の活動はまさに人間が責任を負うべきものであり、第2に、このような活動でこそ、人類という種が力を発揮できるからだ。

 メリアム・ウェブスター辞典が2025年の「今年の単語」に選んだ「スロップ」(slop)(『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)で昨年最も読まれた記事に登場した「ワークスロップ」〈workslop〉も含む)に便乗して、筆者らは「シンクスロップ」(thinkslop)を使うことにする。AIの使いすぎによって生じうる、怠惰で粗雑な思考を指す言葉だ。