Step2◆なぜ、計画と実績がかい離するのか
新規出店をする場所の妥当性を評価する時、本社は既存店と合わせた全社的事業計画を立てます。その際、予想売上高は、顧客数と客単価をセグメント別に概算して評価します(緻密な条件を設定して推計しているケースも多くみられます)。地域特性によるアルバイトの集まり方(熟練度の高い人材が集まるかどうかなど)や食材の集中購買ができるかどうかなどのコスト要因も大きな影響を与えます。
事業計画と実績(売上げ・コスト)を比較して、計画通りに行かない場合、その原因を明らかにすることがきわめて重要であることは言うまでもありません。ただし、これは店舗の状況をよく理解している人でなければできません。
「本社も、各店舗の業績を見ているし、そこから状況を把握できるのでは?」と思われる人もいることでしょう。確かに、計画と実績のかい離を知ることはできますが、「なぜ、計画と実績がかくもかい離するのか」の原因まで理解することは難しい。
原因を突き止めるには、まず現状分析が必要です。お客さんを観察したり、馴染みの人に質問したり、アルバイトの人たちと討議したりすることで、初めて問題が浮き彫りになってくる。問題の発見ですね。
次に、「なぜ、そういう状況に陥ってしまったか」を考えます。ここで頭脳をフル回転。想像力を働かせて、仮説を立てるのです。この想像力というのがポイントです。現場を知らない本社スタッフには、まずできません。
出店計画と店舗実績にズレが生じると、出店しても収益性が低いという悲惨な結果を招きかねません。その最大の原因は、対象顧客セグメントの読み違いです。若い学生が中心と見込んだのに、実際は年配のサラリーマンが来店したとなれば、メニューとその改定頻度、料理の味付けや量、単価設定、座席配置等々、計画を見直さざるをえなくなります。
また、曜日別、時間帯別、あるいは天候による想定来店顧客数の評価がミスマッチだと、食材調達やアルバイトのシフトなど、生産性やサービスの質にダメージを与えます。
今回のケースは、業界1位との格差が300店舗にも及ぶという不利な状況で多店舗展開を計画しているわけですが、こういう場合、成功確率の高い出店計画をなおざりにして、ともすれば「出店ありき」の計画を遂行しがちになります。過去の出店開発で使用した変数や方程式をそのまま使ったり、評価基準についても甘くなったり……だから、全体の業績が悪化する。
心しなければならないのは、目的は、あくまで自社の業績を大幅に向上させるための多店舗展開であり出店開発であるということです。店舗のキャッシュレジスターで読み込むデータ以外の情報が、出店開発に大きな影響を与えます。それは、性別、年齢層別、お店の使い方別(単なる食事、飲み会、デート、女子会、シルバー会など)といった基本情報であり、これを観察し、観察した結果やアンケートの回答を数値化して、新規出店に際して必要となる評価軸を加えることは、店舗の仕事なのです。
このような視点で顧客と店舗を観察すれば、店舗業績を高めるための施策が見えてくるはずです。
◆既存店(現場)における問題発見のポイント◆
1.出店開発の目的は、全社的業績の大幅向上である。
2.既存・新規にかかわらず、全店舗に共通する問題を考える。
3.本社にできないこと=既存店にしかできないことを考える。
◆具体的なアクション◆
1.お客さんの観察・ヒアリング、スタッフ間の討議から現状を把握し、「問題を発見」する。
2.「なぜ、そういう状況に陥ったか」について、創造力を働かせて仮説を立てる。
3.精度の高い基本データ(対象顧客セグメント分析、想定来店顧客数の評価など)を収集・分析する。
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