これほどまでに固定資産の比率が高ければ、次に気になるのは、その固定資産をどうやってファイナンスしているかだろう。長期性資金の代表である自己資本で賄えていれば理想的だが、それは一般には難しい。不動産賃貸業であれば、借入の見合いとなる固定資産は賃貸用不動産であって、いわゆる「黄金の担保」である。賃貸用不動産を長期借入でファイナンスすること自体は問題ない。

 URの場合も、固定資産のファイナンスは、長期借入金11兆円や都市再生債券2.2兆円といった有利子負債に依存している。とくに、長期借入金のうち、10.7兆円が財投借入(財政投融資借入)となっている。財投借入というのは、国の信用力をバックに低利で発行される財政投融資特別会計国債(財投債)を原資として、独立行政法人などに貸し付けられる財政投融資資金を利用した借入である。国の信用をバックにしているので、非常に金利が低いというメリットがある。

 URは、このような運用資産を使って、経常収益1.1兆円を上げ、このような借入に対して、2200億円程度の利子を支払って、諸々の費用を控除したあとで、400億円を超える当期純利益を計上している。総資産利益率こそ非常に低いが、官営事業は赤字を垂れ流すものというイメージからすれば、まずまずの業績であり、一見するとURは優良独立行政法人に見える。

耐用年数がなんと70年!

 しかし、URの「重要な会計方針」を見ていると、この貸借対照表は、慎重に読む必要があることに気がつく。具体的には、減価償却の耐用年数が、建物10~70年、構築物10~70年、機械装置45、70年と、かなり長いのである。実際、賃貸用不動産は耐用年数70年の定額法で減価償却されている。

 もともと日本住宅公団が設立された昭和30年時点においては、税法上の賃貸住宅の耐用年数は65年だった。しかし、当時は、賃貸住宅の減価償却費に、利子や管理費等を上乗せして家賃を決定する方式(原価家賃方式)が取られていた。この場合、耐用年数を長めに設定して減価償却費を抑えればその分原価が減り、公団住宅の家賃を低く抑えることができる。

 当時の加納日本住宅公団総裁の昭和32年3月27日の大蔵委員会における発言を読むと、原価家賃による家賃決定方式を前提に、低家賃を実現するために、70年という耐用年数を採択したことが伺える(この後、民間の賃貸住宅の税法上の耐用年数は、昭和40~41年の税制改正によって60年に短縮され、平成10年の改正でさらに47年にまで短縮されているが、URは、これに合わせて耐用年数を短縮してこなかった)。