URは400億円程度の減損損失を計上しているが、そのうちの一部は、このように計算された減損損失である(このほか、耐用年数到来前に除却した建物の除却損も、減損損失に計上されているようである)。
一般に、資産評価が適切になされていれば、毎期、毎期、資産の除却損や減損損失が出ることはない。毎期、減損損失が出るとなると、過去、長期にわたって資産評価が甘め(高め)になされているのではないかという疑念が出てくる。
さらに、資産の除却損を別にした減損損失が、民間と比べると低めに計算されるというURの体質がある。これは、現在価値を算出する際に、将来のキャッシュフローを割り引くときに使う、割引率が2.5%と低いからである。財投借入は国の信用をバックにしているので、借入金利はかなり低い。この金利と株主資本コストが加重平均されて、いわゆる加重平均資本コスト(WACC)が計算される。現状、これが2.5%である。
毎期100億円受け取るキャッシュフローを、10%で割り引けば現在価値は1000億円(100÷0.1)、5%で割り引けば2000億円(100÷0.05)、2.5%で割り引けば4000億円(100÷0.025)となる(毎期のキャッシュフローをC、利子率をrとすると、C/rと計算できる)。したがって、もし、民間並みの4~5%の割引率となれば、減損損失は巨額に上ると想像される。かりに5%なら、現在価値は半減しかねないだろう。
なお、将来のキャッシュフローは、土地と建物を一体として見込むが、減損損失については、すべて建物の評価減に割り当てられているとのことである。土地は、減価償却の対象とならないので、資産評価額をできるだけ土地に割り当てるインセンティブがあるのかもしれない。
UR都市機構が設立されるとき、徹底的な資産査定(デューディリジェンス)が行なわれ、当時の有形固定資産13兆円は、建物などの償却性資産4兆円と土地9兆円に分類された。とくに客観的な証拠にもとづく議論ではないが、印象論でいうと、土地の評価額が高すぎるような気がしないでもない。
土地の評価額が資産価額に占める割合は、地方へ行けばかなり低くなる。地方では、不動産価格は、基本的に建屋の価格がほとんどであろう。他方、都市部では土地の価格は高くなるが、建物自体も高層化するので、よほど土地の価格が高い場合を除いて、土地の割合はそれほど高くはならないだろう。東京23区内で、低層マンションばかりを保有しているというのであれば別だが、建物等4兆円・土地9兆円というのは、すぐに信じるにはためらいを感じる比率である。