以上を勘案すると、資産評価額が高め高めに出ているので、厳しめに資産査定すれば、数兆円の評価減が出るのではないかという疑念を捨てきれない。もっとも、高度成長期に、いい住宅を少しでも安い家賃で提供したいという善意から始まった資産を高めに評価するポリシーは、当時の時代背景と原価家賃方式の下で、一定の合理性を持っていたに違いない。したがって、誰かが悪意を持って粉飾決算を行なったということではない。
しかしながら、将来、金利が急上昇するなど、何らかの外的ショックによって、URの資金繰りが行き詰まり、財投資金が引き揚げられるとともに、欠損金が一般会計付け回しとなる可能性がまったくないわけではない。この場合、URの欠損金を税金で穴埋めすることになるので、経営方針や会計方針に問題がなかったかについて、マスコミも含めて大きな議論になるに違いない。このとき、現在の資産を高め高めに評価するポリシーが「国家レベルの粉飾決算だ!」と糾弾される可能性がある。
一般に、インフレになれば家賃も上がるはずなので、URにはインフレ耐性がある。しかし、13.3兆円の有利子負債の調達金利が1%上がって債務の入れ替えが進めば、利子費用は1330億円増える。これは、現在の当期純利益のほぼ3年分である。さらに、減損損失を計算するときの割引率も高くなると予想される。これは、なかなかに厳しい金利感応度であろう。
数十年そっとしておく?
では、どうしたらいいのだろうか。URをどうするかを考えるにあたって、居住の安定性に配慮しつつ、雇用を守りつつ、さらなる国民負担を増やすことなく、解決しなければならないものとされる。
さらなる国民負担が生じるかどうかを考えるにあたっては、URの資金繰りが将来、ショートしないかどうかを見極めることが最大のポイントになる。たとえ耐用年数を70年に設定していても、実際に建物が70年以上使えるのであれば、何の問題もない。筆者は、建築については素人だが、物理的には70年は余裕でクリアできると聞いている。問題は、経済的に70年の使用に耐えられるかどうかである。
現在、約50年で建て替えているのは、昭和30年代までに建てられた物件である。物理的には、まだまだ使えるものの、当時と今の日本人の体格の変化、ライフスタイルの変化、面積・間取りなどが、時代にそぐわなくなってきている。そのため建て替えたほうが、経済的に引き合うというのは合理的な判断だろう。





