逆に、一体感や士気に欠ける風土を生み出しているリーダーは、指示命令と自らの率先行動に依存したリーダーシップを発揮していることがわかる。つまり、プレーヤーだった頃の自分から脱却できておらず、自分自身がピッチに出てボールを蹴ったり、ボールの蹴り方を事細かく選手に指示しないと気が済まないのだ。

 このように、優れたリーダーシップにはある種の型がある。もちろん「成功したリーダーには様々な個性があり、これが絶対というものはない」という人も多く、ある程度それは正しい。ただ、優れたリーダーシップにつながる型があることもまた事実だ。

 柔道家が人を投げる時は、必ずある型に沿った動きになる。相手との位置関係や重心移動がある型にはまらなければ、人を投げることはできない。もちろん、柔道家には様々な個性があり、人によって動き方や得意技は異なる。しかし、人を投げる瞬間には、ある型にはまった動きになるのだ。我流で人を投げられるわけではない。

 リーダーシップにもこれに似たところがある。自分の発揮するリーダーシップがある型にはまった時、はじめて一体感や士気の高い組織風土が生まれる。そこを外したままで、いいリーダーシップを発揮できるわけではない。

無意識の「動機」の理解が
リーダーシップを左右する

 優れた型のリーダーシップを発揮する上で、それが向く人と向かない人がいることを知ることは重要だ。向かない人はリーダーとして成功できないと言っているのではない。リーダーに向く人は極めて少数派であり、多くの人は多かれ少なかれリーダーに向かない側面を持っている。

 しかし、本来は向かないにも関わらず、リーダーとして成功している人は沢山いる。また、リーダーとして向く性格を持っていながら、失敗する人もいる。それが人間のおもしろいところだ。要は、リーダーとして求められる役割に応じて、自分の情動を軌道修正できるかどうかが問われているのだ。