それでは、どうすればリーダーとして求められる役割を発揮できるのだろうか。それを知るには、人の無意識の世界にある「動機」を理解する必要がある。動機とは、人が無意識のうちに持つ関心の方向性や、モチベーションの源泉のことをいう。これが人の好き嫌いや得意不得意を規定する。測定可能な動機には、「達成動機」「親和動機」「パワー動機」の3つがある。

「達成動機」の高い人は、自らの力で成果をあげることに喜びを感じる傾向が強い。このため、達成動機の強い人が素のままでリーダーシップを発揮すると、全てを自分でコントロールしようとして、率先行動や指示命令に走り、組織の風土は悪くなる傾向がある。達成動機の強い人は、自分のやることには強い関心があるが、他人のやることには関心がないのだ。

 このため、組織の規模が大きくなるにつれて、目の行き渡らないところが生じ、あちらこちらでマネジメント上の問題が起こることが多い。ベンチャー企業の社長には、この達成動機が強い人が多い。ベンチャー企業が成長し、社員数が100人を超えたあたりから、人材が流出したり、社内がゴタゴタすることが多いのはこのためだ。

 そのため、達成動機の強いリーダーは、意識して他の人に働きかける訓練をする必要がある。他人に関心のない人にとって、これは苦痛である。本来であれば自分が成果をあげることに全てのエネルギーを注ぎたい。しかし、理由はわからなくても、人に働きかけることを続けていれば、ある日何かに気づく瞬間が訪れる。そして、「リーダーシップとはこういうことだったのか」と感じるようになる。その時から自己のリーダーシップが変わり始めるのだ。

考え方の違う人に
自ら働きかけられるか

 また、「親和動機」の強い人は、他人と仲良くすることがモチベーションにつながる傾向がある。ただ、リーダーシップを発揮する上で、この親和動機が邪魔になることが多い。社員を過去の成功体験から引き離し、不確かな環境の中で試行錯誤させようとすると、反対意見やアレルギー反応に直面することになる。