「で、他の話は?」
「・・・・」もう用意してきたネタがなくなった僕は、頭が真っ白になり、背筋に冷たいものが流れた。
― ネ、ネタがない。まずい。
そして、青くなった私を見た彼女の口元からは、なんと笑みが零れたのだった!
― そ、そういうことだったのか!?こちらのネタが尽きるのを待っていたのか、、、、。
そう。きっと彼女は受験生があらかじめ用意してきているネタを全部吐き出させた上で、その場で「アドリブで」どういう話をするのかを聞きたかったのだ。素の状態で話をしたかったのだ。
僕は途方にくれた。
さすがに、この超ハイレベルな面接で話せるような「いいネタ」はもう残っていない。
頭をフル回転させたが、他には出てきそうにない。大体長い時間考えに考え抜いたネタはすべて使い尽くしてしまったのだ。
これ以上、何があるわけではない。
― もはや、これまでか。。。。。
そう諦めかけたとき、ふと、彼女がくれたコーラの赤い缶が眼に入った。
!
その赤が、とても印象的で、それが僕の記憶の何かを刺激した。
何かを思い出させようとしていた。
― ・・・・そうか!
僕はボソボソっと言い始めた。
「・・・それでは、コーラの話をさせてもらっていいでしょうか?」
「え、何?」
「コーラの話でもいいですか?」
「『コーラの話』?それ面白そう。是非聞かせて」嬉々とした彼女は漸く僕の話を聞きはじめてくれたのであった。