「それは、悪いですよ。僕は日本への就職を考えていたため、就職活動のために何回も帰国しなければなりませんでした。もともと、授業で積極的な発言をすることによって、いい成績を取ってきた僕が、授業に出席できなかったら良い成績が取れるわけがありません。それが成績が悪かった理由です」
事実だ。テストで高い点数を取るというより、授業で積極的な発言をすることにより毎回いい成績をもらっていた僕にとっては授業に出れないことは大変不利で、それが成績に響いたのであった。
これを、「はい、確かに成績が悪いです」と日本人的に「自分の落ち度に対しての言い訳はしない」と潔く割り切って、きっちりと反論せずに相手の言い分だけを鵜呑みににしたり、悪い事実だけを認めて原因を探索しなかったりしたら、海外では、まず人なんて動かせない。一方で、「就職活動で忙しかったので」と単なる「言い訳」にしか聞こえないようなものを添えるだけでも駄目。
「なぜ、成績が悪かったのか」という質問に対する回答を真摯に考察し、事実と説明を交えて応えること。さらに、相手が本当に知っておくべき情報、知っておいて欲しい情報、ここでいうと「私は、クラスで積極的に発言する人間なのである」を付加することが重要なのだ。
つまり、一聞かれたら二を返す。十聞かれたら、二十を返す。
それも、的外れなことではなく、しっかりと真摯に相手の立場に立って回答する。必要なことはトコトン伝える。それが大事なのだ。
この「一聞かれたら二を返す」会話のキャッチボールができること。
これが最も重要で、それが世界で本当に必要とされているコミュニケーション力なのだ。
その際、英語が上手いか下手かは関係ない。
英語が上手くても、これができなくて撃沈する日本人を何人も見てきた。
一方で、多少英語が下手でも、これができるから活躍している日本人もたくさん見てきた。
英語は下手でもいい。
なぜなら、二を答えようとする、付加価値を与えようとする人間には、英語が下手でも、皆真剣に聞き入るからだ。
では、英語がそれほど上手くない人が、どうやったら、その高度に思える「一聞かれたら二返す」ということを英語でやりのけることができるのか。
どうやったら、その「本当に必要な」英語力をつけることができるのか。
その辺りを本連載で考察していきたく思う。
三菱商事株式会社(1997-2011)において鉄鋼製品で海外新規事業構築や米国に拠点を持つIT子会社の経営を行う。ハーバード・ビジネス・スクールよりMBA。2005年米国のジャンクフードの全米調理選手権で優勝。(その時の模様は著書「パンツを脱ぐ勇気」ダイアモンド社)2011 年グローバルアストロラインズ社を立ち上げ、「本質徹底探求プログラム」「隣りに座るグローバル交渉術」「英語ブートキャンプ」「若手リーダー点火研修」等革新的なグローバル人材教育プログラムを開発。三菱商事グループの人材開発を担う子会社ヒューマンリンク社と共同で同社グループ向けに展開。それ以外にも業種・会社のサイズを問わず、様々な企業・学校・団体等に積極的に研修や講演を提供している。