迷信4:イノベーションは研究所で生まれる。
現実:「インパクトのある、これまでとは何か違ったこと」という定義のイノベーションは、組織のどこででも起こりうる。すべての人が、古い問題を解決する新しいやり方を探し求めるべきである。
迷信5:イノベーションは優れた技術があれば成功するだろう。
現実:市場に破壊的変化をもたらすのは、(技術ではなく)ビジネスモデルのイノベーションであることが多い。つまり、価値を生み出したり、獲得したり、あるいは提供したりする新しい方法である。
迷信6:イノベーションとは性能や機能を改善することだ。
現実:ときに、従来の次元で性能を改善することがイノベーションとなる場合もある。しかし最も破壊的なイノベーションは、入手しやすさや手頃な価格を実現するために、性能や機能を犠牲にすることがある。
迷信7:イノベーションの洞察を得るためには、自社の顧客に耳を傾けることが大変重要である。
現実:自社の顧客は、いまある商品をより良くするための意見を言うことはできるかもしれないが、破壊的な成長をもたらすような方法を示唆することはない。つまり、新たに成長する事業を見つけるためには、新しい方法で、新しい市場を探索しなければならない。
迷信8:ゲームのルールを変えるようなイノベーションは、起業家だけが起こせる。
現実:最近起こった破壊的で素晴らしいイノベーションの多くが、大企業によってもたらされている。たとえば、GEの低コストの画像ソリューション、シスコのテレプレゼンス(ビデオ会議)サービスなどがある。
迷信9:成功するためには、最大の市場をターゲットとすべきである。
現実:いまは存在しない市場を正確に測定・分析することは難しい。最も強力なイノベーションとは、市場を「創造」することである。
迷信10:イノベーションには大きな投資が必要だ。
現実:友人のピーター・シムズが『小さく賭けろ!』(邦訳2012年、日経BP社)で書いているように、大きく勝ちたいのならば、小さく始めるべきである。
この他にもきっとあるはずだ。あなたはどんな迷信を見聞きしたことがあるだろうか。
HBR.ORG原文:Ten Innovation Myths October 28, 2011

スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイトのマネージング・パートナー。同社はクレイトン・クリステンセンとマーク・ジョンソンの共同創設によるコンサルティング会社。企業のイノベーションと成長事業を支援している。主な著書に『イノベーションの最終解』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(ジョンソンらとの共著)などがある。