日本企業の新興市場に関する意識

 第1に、当事者としての企業の意識である。下図は、日本能率協会が行った日本企業の意識調査の結果である(日本能率協会(2010) 『第32回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題2010』、 社団法人日本能率協会 経営研究所、調査対象:全国の上場企業(2222社)および非上場企業(従業員300人以上、1778社)4000社、回答数632、有効回答率15.2%)。

図1:日本企業のBOPにおける事業上の取組み

(2010年度日本能率協会アンケート調査)

 これによれば、BOP市場での事業上の取り組みに関し、実に69.8%が「現在、対象市場として考えていない」と回答、「すでに進行中である」は3.5%にすぎない。一方、個人所得でいえばBOP層の上(年間3000ドル超)に位置する新興国市場に関しては、「現在、対象市場として考えていない」は、BOP市場への回答の約半分36.9%となり、「すでに進行中である」はBOP市場の10倍の37.7%に上る。

 つまり、現時点では、日本企業は低所得層であるBOP市場よりも、すでに需要が顕在化している新興国市場への取り組みを優先している。これはある意味経済合理的である。企業の経営資源には限りがあり、その資源をより収益の見込める事業機会に選択的に投入している。逆にいえば、新興国市場への資源投入が優先されている結果、BOP層市場へのコミットメントはその分低くなっているといえよう。