前回の記事では、イノベーションの取り組みにおける「異なる両者が連携する」組織モデルがうまく機能していないときに現れる兆候を紹介した。ではどうすれば、うまく両者が協力関係を築けるのか。シンプルな10のヒントを紹介しよう。
定説によれば、イノベーションとコア事業は分けるべきとされている。新しいものと既存のものは切り離して考えよ、ということだ。しかしこのアプローチは、大企業がイノベーションにおいて発揮できる重要な強みを見逃している。グローバル企業には、イノベーションの取り組みに活用できる膨大な資産と能力がある。インドのGEヘルスケアは、ミルウォーキーにあるGEの研究開発施設に蓄積された心電図記録技術の膨大なノウハウを活用し、400ドルの携帯型心電計を開発した。
私は同僚のクリス・トリンブルと共同研究を行い、企業が効果的にイノベーションを実行するには、「異なる両者が連携する」(distinct-but-linked)組織モデルを採用すべきであることを発見した。このモデルは、企業がイノベーション専任チームを編成し、そのチームが企業のコア事業部門と対立するのではなく、協力関係を築けるようなプロセスとインセンティブを築くというものだ。
イノベーションチームとコア事業部の協力関係を育むための、10のヒントを以下に紹介しよう。
1. 専任チームとコア事業部の両者にとって利益となるような動機付けを明示する。
2. 専任チームとコア事業部が相互依存関係にあるという現実を浮き彫りにする。
3. 共通の敵として、競争相手を明確にする。
4. 専任チームとコア事業部が共有すべき価値観を強調する(たとえそれが、「誠実を心がける」のような単純で普遍的な価値観であっても)。
5.両者の責任分担を、可能な限り明確にする。
6. (イノベーションとコア事業の)兼任スタッフが、イノベーションの取り組みと本来の業務に同時に対処しなければならないとき、必要なリソースに制約が生じる場合がある。このことをあらかじめ考慮しておく。
7. カニバリゼーションに対する懸念が正当なものか根拠のないものかを、データを収集して見極める。
8. 既存のインセンティブシステムを変える。特に「部門間を横断して協力する能力」を業績評価の対象にする。
9. 専任チームと兼任スタッフが接触・協働する局面で、影響力を持つ協力的な内部関係者にサポートしてもらう。
10. イノベーションの取り組みが成果を上げたら、専任チームと兼任スタッフが公平に功績を分かち合う。
あなたの組織では、このような専任チームとコア事業部の協力関係が効果的に機能しているだろうか。また、どのような行動が協力関係を推進してきたのだろうか。
原文:10 Tips for Creating Distinct-but-Linked Innovation Groups August 23, 2010