3S(整理・清掃・整頓)は、日常の仕事の中から解決すべき問題をその都度発見し、試行錯誤を通じて長期的に問題を解決し続ける発見型改善の典型例です。このような3Sを徹底することで、少々大げさに言えば、工場独自の文化が形成され、それ故に他社との差別化につながって、企業の持続的競争優位を確立することができます。
それでは、なぜ、3S活動を継続することで、文化が形成されるのでしょうか。3Sの徹底が文化の創造に結び付く論理とは、どのようなものでしょうか。改善活動の継続を通じて、製造体質を改善するとか、製造現場の風土を形成するなどと言われる現象は、みなこの文化の創造を指し示していると考えられます。
文化とは混沌を秩序の中に組み込む装置
3Sが工場文化の創造に結び付くメカニズムについて解説する前に、そもそも文化とは何かを定義しておきたいと思います。日常生活の中で、文化という言葉は頻繁に使用されていますが、改まって「文化とは何か」と問われると、はたと困ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
文化という言葉には、様々な定義があるのですが、ここでは、無定形の自然や混沌状態に対して、秩序を与えるものと定義しておきたいと思います。つまり、文化とは、外部環境の変化によって絶えず新しく生まれてくる混沌を、秩序の中に組み込む装置に他なりません。文化があるからこそ、混沌を秩序に変換することが可能になり、人間が混沌状態をコントロールすることができるようになります。