職場をテーマパーク化
「遊び」が文化創造を促進する
このように、3Sは本来、工場文化の創造に結び付く行為なのですが、トップから強制された3S活動であると、現場にやらされ感が蔓延してしまい、現場発の文化が創造されない、あるいは創造された文化が現場に根付きません。そのため、3S活動を継続し、工場文化の創造に結び付けるためには、上からのやらされ活動ではなく、製造現場自らが自主的に活き活きとして活動に取り組む必要があります。3Sをこのような活き活きした自主的な活動にするためには、ある程度「遊び」の要素が必要になります。
最近、3Sを積極的に推進している企業では、職場のテーマパーク化を行っている企業が少なくありません。テーマパークとは、各職場が特定のテーマを自ら設定し、そのテーマに沿った形で、文字通りパーク(公園)を工場内に作ってしまおうというものです。作業者自らが、様々に工夫しながら、職場を写真やオブジェによって、動物園や水族館、レストランといった遊び心いっぱいの場所に変えることで、3S活動を活性化するための手段です。
例えば、ある工場の出荷エリアでは、生産ラインで不要になった部品供給用のコロコンを再利用して部品棚にしていますが、この形状が流しそうめんに似ていることから、「そうめん館」という名称のテーマパークを作っています。このような部品棚を設置することで、部品の先入れ先出しが自然にでき、一目で在庫量が判り、シュート(棚)の大きさで最大在庫量が決まるため、欠品や在庫増加の歯止めとなっているわけです。
この事例の面白い点は、作業者自らを料理人にたとえて3Sを徹底している点です。料理人にとっては、日々の厨房の掃除は当たり前で、手際の良い段取り・調理を行うためには、整理・整頓は欠かせません。このような意識を持つと、自然と3Sが励行されるようになります。
また、このエリアでは、「そうめん館」に触発されて、樹脂の平パレット上にポリボックスを載せた荷姿がピザに似ていることから、「ピザ館」と呼んでいるエリアや、鉄板の網パレットのなかに部品が入っている荷姿がステーキに似ていることから、「ステーキ館」と呼んでいるエリアが自然発生的に次々と立ち上がり、職場間で料理人の腕ならぬ3Sの徹底度合いを競っています。
これらの事例を見ると、職場のテーマパーク化は、自らテーマを設定しますし、様々に工夫しながら切磋琢磨し、適度に「遊び」の要素を取り入れて、活動を自ら楽しむという側面があります。また、製造現場にとっては、通常は考慮の範囲外である顧客や工場見学者の目を意識して、自らの職場の特徴やセールスポイントは何かを考え、様々に工夫を凝らして自職場を演出するという側面があります。ここに、職場のテーマパーク化が文化創造を促進する理由があります。