進んで失敗を望め――こう言われても、とまどうかもしれない。しかし大きな失敗を防ぐために、小さな失敗が有効になるとしたらどうだろう。それが実証された、ディズニーの事例を紹介する。

 

 イノベーションの公式には、3つの変数がある。
イノベーション=f(戦略+創造性+実行)

 実行段階において低コストで実験を行い、失敗を許容する必要がある――最近はこのことが重要視されている。しかし、実行における高リスク・高コスト・高い失敗確率を、その前の段階で減らす方法もあるのだ。創造性を発揮する段階(アイデア出し)でボツと思われたアイデアについて、実行段階に至る前に低コスト・低リスクの実験を行うことだ。競合が大きな成功を収めた時、自社の誰かがこんなふうに言うのを聞いたことはないだろうか。「自分たちもこのアイデアは考えた。でもボツにされたんだ!」

 新しいアイデアを生み、実験を成功させる公式には、これも3つの変数がある。
アイデアの成功=f(支援+失敗+組み合わせ)

1. 低コストの実験を、常に後押しする
2. 失敗を望む。失敗は組織が前進している証である
3. 失敗したアイデアどうしを組み合わせ、新たに画期的なアイデアを生む方法を身につける

 例を紹介しよう。1989年に、ディズニーMGMスタジオというテーマパークがオープンした時、予想を超える入場者数を記録した。そこでパークは、さらなるアトラクションと、レストランやギフトショップなどの施設を早急に追加する必要に迫られた。我々は、同社の部門横断チームと協力してレストランの新しいコンセプトを生み出すよう依頼された。

 まず2日間のセッションを行い、1日目は参加者の想像力を解放するために数々の実験をした。最初に、「古き良きアメリカ」の例を考えてもらった。ある参加者はドライブイン・ムービーを挙げた。そして参加者を小グループに分け、ドライブイン・レストランというコンセプトについて検討してもらったが、十分な収益を上げるほどの集客が見込めるアイデアは、ひとつも出なかった。それらはレストランというよりは、アトラクションだった。こうして、このアイデアはボツになった。