部門間の連携を欠くタテ割り組織を、英語では穀物や飼料の貯蔵庫になぞらえてSilo(サイロ)という。イノベーションを阻む縦割りを打破するために、最初に行うべきことは何か。ゴビンダラジャンらによれば、まずはイノベーションの必要性を納得させることであるという。
「あなたの会社で、イノベーションを阻む最大の障害は何ですか」経営幹部にこう質問すると、最初に返ってくる答えは決まっている――「タテ割りです!」ある幹部は最近、こうつぶやいた。「要塞ですよ」
企業のタテ割りは、農業用のサイロと同じように、重要なものを蓄えており、外からのアクセスを難しくする。小麦やとうもろこしを雨や雪から守るには、それでいい。しかし、部署・部門を横断してイノベーションに取り組もうという場合、それでは困る。組織が大きければ大きいほど、縦割りの弊害も大きくなる。縦割りによって、各部門の興味の範疇を超えることについては共有や協働が実質的に不可能な環境が生まれる。
イノベーションは、縦割りの弊害を打ち破るトロイの木馬となる。ただしそれは、リーダーが役目をまっとうする場合のみ有効となる――すなわち、変化を受け入れ、歓迎することだ。
肝に銘じておいてほしい――企業というものは、変わりたいと望むから変わるわけではない。顧客、競争、科学・技術の進歩、政府の規制によって、変わることを余儀なくされるのだ。変化を迫られている状況下でのみ、人々は助けを求め、与え、受け入れるのである。
しかしこれは、リーダーシップの下に変革とイノベーションの必要性が皆に理解され、共通の目標に向かって一丸となり新しい方法で取り組む必要性が理解されなければ、実現しない。以下は、タテ割りの弊害を打破するために必須となる、はじめの2つのステップである。
●イノベーションの必要性について、説得力に富む主張を示す
●十分に整合性のある、イノベーションの戦略的課題を示す
まず、イノベーションの必要性を納得させる主張について考えてみよう。次の言葉は、いつ誰が言ったものか当てられるだろうか。
「新しい秩序を打ち立てることほど、実現が難しく、成功が疑わしく、実行に危険が伴うことはないと考えるべきである。なぜなら改革者にとって、古い秩序から利益を得る者すべてが敵となり、新しい秩序から利益を得る者たちは無気力な味方にしかならないからだ。この無気力は、一部は自分たちに都合の良い法律を握っている反対派に対する恐怖から生じており、また一部は、みずから経験するまでは新しいことを心から信じない、という人間の不信から生じている」