ゼンガーらは、コンピテンシーの重要性について実証的で揺るぎない主張を展開しているが、重要な点を見落としている――特定のコンピテンシーはほかより重要であるということだ。まず、どのリーダーにもある程度求められる最低限のコンピテンシーがある。そしてさらに、卓越したリーダーに求められる特別なコンピテンシーというものがあるのだ。
どんなに卓越したイノベーターであっても、あるいは優れた問題解決者や戦略家であろうと、他者を魅了しモチベーションを与え、関係を築き、効果的なコミュニケーションを図るということができなければ、そうした能力もまったく役に立たない。ゼンガーらが「対人関係スキル」(interpersonal skills)と呼ぶもの――これを私は「社会性の知能 」(social intelligence)と呼ぶ――は、一流のリーダーシップに必要な極意なのだ。
社会性の知能に乏しければ、ほかのどのコンピテンシーを組み合わせても、人々を牽引する力は発揮できないだろう。 ほかにどんな強みがあろうと、不可欠なのは社会性なのである。
では、このスキルを見抜くにはどうすればいいのか。採用で数多くの成果を上げている経営幹部に聞いたところ、彼の組織では、候補者がルーチンとして経験する面接やグループディスカッション、食事、パーティーを通じて、次のように社会性を評価していた。
「その人がパーティーやディナーで、自分の役に立ってくれそうな人だけでなく、全員に話しかけているかどうかを注意深く観察するのです」と彼は言い、社会性の知能を測る指標として次のようなものを挙げた。初対面の会話で、候補者が相手のことを尋ねているか、それとも自己中心的な話ばかりをしているか。また、自分自身のことをごく自然に話せているか。その会話が終わる頃には、候補者が対外的にこう見られたいと願う姿ではなく、その実像が伝わったか。
私ならばそのような主観的な尺度だけに頼ることはしない。それらを雇用のベスト・プラクティスと組み合わせるほうが効果的である。ただし、自分の直観を信じることも大切だ。
HBR.ORG原文:The Must-Have Leadership Skill October 14, 2011

ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)
心理学者、科学ジャーナリスト
ラトガーズ大学のConsortium for Research on Emotional Intelligence in Organizations共同創設者。エモーショナル・インテリジェンス(EI:心の知性)の提唱者で、著書に『EQ こころの知能指数』(講談社)、『エコを選ぶ力―賢い消費者と透明な社会』(早川書房)などがある。