見事に見逃したグーグルの起業

松山:eグループは本当に面白かったですね。創業者が4人いるんですけど、その中のスコット・ハッサンはグーグルの3人目、つまりラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの次にグーグルに加わった人です。ハッサンはPythonを使ってプログラミングを書いていました。ただラリー・ペイジは当初Pythonじゃなかったんですが、ハッサンがあまりにも優秀だったので、彼が加わってからグーグルのプログラムはすべてPythonで書くようになり、いまもそれは続いています。そのくらいハッサンは優秀だったんです。

 その彼がグーグルのプロジェクトを外れて始めたのが、eグループでした。あと、ラリー・ペイジの兄カールもいました。そういう意味でシリコンバレーの中でも「筋のいい」スタートアップ企業でした。

――グーグルとも縁があったんですか?

松山:当時、カールの紹介で、弟のラリー・ペイジに会ってるんです。「今度、検索エンジンでこいつ創業するんだ」って言われて。でも当時はアルタビスタがダメになった頃で、検索エンジンは技術力ではなくて、ヤフーのようなメディア・パワーがないと勝てないと言われていた時代でした。だから僕もラリー・ペイジの話しを聞いても「またアルタビスタかな」と思って、注意も払わなかったですね(笑)。弟のラリー・ペイジよりも兄貴のカールの方が成功するのかと思って(笑)。

eグループはヤフーに買収されたときのグローバルな評価額は4億ドル(400億円)だったんです。でも弟の会社(グーグル)は20兆円企業ですからね。いま考えれば、僕もeグループなんてやってないで、当時はグーグルの日本法人もなかったので、そっちをやっていれば凄いことになってましたね(大笑)。

――eグループでは世界のスタートアップ企業を知る機会となったんですね

松山:はい。結局モリッツは引退してしまったので、会えずじまいでしたが、貴重な経験をいくつかしました。面白かったのは、ヤフーに買収された後、eグループの連中がみんなグーグルに転職していったことです。eグループとグーグルは、当時から仲が良かったんで。シリコンバレーってすごいですよね。買収は事業だけでなく人材も買うわけじゃないですか。でも人材は保証できない。割と優秀な人は当時グーグルに移っていくのを見て、買収も難しいんだなと思いました。

――やはり人のつながりが大きいんですね。

松山:そうなんです。ペイジ兄弟もいたし、お互い技術系の人間同士ですから。ヤフーはメディアから来た人が偉くなっていたりして、エンジニアにとって「グーグルのほうがいい」みたいな空気もありました。ですから、この会社で働きたいというものがないと、エンジニアを引き付けるのは難しいなあと思いました。