今回は博報堂ケトル・木村健太郎氏とTHE DAY・佐藤夏生氏との対談です。博報堂ケトルの「広告は変われる」もついに連載最終回を迎えます。アイデアとクリエイティビティの重要性はもちろんですが、広告の未来についてお二人は何を語るのでしょうか。

  この連載も最終回になりました。「広告は変われるか」という問いに対して、これまでプロダクト、PR、コンテンツ、モバイル、ソーシャルと、様々な角度からその最前線のプロたちと「広告の未来」を探ってきましたが、最終回は、「これからの広告会社とクライアントのパートナーシップはどうあるべきか」について佐藤夏生さんに大いに語っていただきます。

 佐藤さんは、「アイデアとクリエイティビティで経営革新するリードエージェンシー」として7月1日に設立された「HAKUHODO THE DAY」のCEO兼エグゼクティブクリエイティブディレクターです。

オリエンがしにくい時代

木村:僕らエージェンシーとクライアントの関係は、ここ数年でいろいろ変わったと思うけど、佐藤さんから見て、何が一番大きな変化だと思いますか?

佐藤:クライアントが戦略を決めて、課題を絞り込んでオリエンして、それに対してエージェンシーがソリューションを打ち返すという従来型のパートナーシップモデルが通用しなくなってきた気がします。課題とソリューションの関係はすでに崩れていて、大きな戦略はあっても、もはや課題すら最初に決められないことがある、そんな仕事が増えました。

木村:確かに、筋のいいターゲット、ポジショニング、コンセプトをカチッと決めて、それに基づいたアクションプランを作って実行すれば、人が動きモノが動き、めでたしめでたし、みたいなマーケティングが通用した時代は10年以上前に終わってしまった感があります。今は、動きながら考える、試行錯誤型マネジメントの時代ですね。この連載で、嶋や井口さんが「リアクション芸」といっていたのもそうだし、佐藤カズーさんが「まずプロトタイプを作る」と言っているのもそうでした。

佐藤:課題を発見した段階でオリエンが生まれる、もっというと、アイデアが生まれた時に課題が見えることもあります。今はストラテジーとアイデアが同化していると思うんです。

木村:何が本当の課題がわからないカオスな状況では、ソリューションのアイデアから目指すべき未来図や解決すべき課題がクリアに見えてくるようなブレイクスルーもよくあります。そんな時代に僕らエージェンシー側に必要なスキルってなんでしょうか?

佐藤:必要なのは、クライアントと常時接続しながら、センスというか身体感覚をベースに課題と戦略を振幅し、即座に実行していくスキル。そして、クライアントの経営者と直接議論して、スピード感を持ってマーケティングそのものを生み出し、運営していく、そんなパートナーシップだと思っています。