優れたソーシャルメディア使いになるより、優れたソーシャルアクションを!
木村:では次に話をクライアント側に移したいのですが、佐藤さんが言っている「経営革新」とはどんなイメージですか?
佐藤:ひとことでいうと、「行動経営」です。別の言い方では「ブランドアクト」とも言います。数字を管理する経営でなく、行動を生み出す経営。そうすれば「経営強度」があがります。経営強度とは、数字には表れない企業と顧客や社会の関係性の強さのこと。コミュニケーションは、行動経営のもとに生まれてくるものだと考えています。
木村:おしゃれな服で着飾るブランディングでなく、愛される行動をするブランディングということかな。もう少し、具体的に教えて下さい。
佐藤:僕はクライアントに、「どういうレストランを経営したいのですか」と尋ねることがあります。何十年も続く三ツ星レストランを目指すのか、それとも流行の商業テナントにどんどん店を出すのか。企業もそんな風に生き様を問われる時代です。数字だけ見るのであれば、三ツ星レストランなんて効率が悪い。商業テナントレストランのほうが、フローで新規客が回って儲かるからです。
でもそれは弱いエンゲージメントであって、流行りが去ってだめになるのも早い。僕は適切な数の本当に愛してくれる顧客がいて、適切な利益を生みだす質の高いレストランこそが、長期にわたって繁栄する経営強度の高いレストランだと思っています。
木村:でもレストランであれ企業であれ、株式会社というものは毎年前年より収益を高めていかなければなりません。
佐藤:もちろん。でも売り上げを前年比120%にするということはどういうことか考えてみてください。それは1.2倍モノを売るということじゃないんです。去年100人を幸せにしたのを今年は120人幸せにするか、あるいは去年100満足した人を今年は120満足させるかのどちらかだと考えるべきだと思いませんか。
木村:なるほど。そういう風に考えれば、長期的な経営強度と短期的な売上拡大は矛盾するものではないということですね。では、そのための行動経営とは、たとえばコミュニケーション領域ではどんなアクションなのですか?
佐藤:広告で騒いだり、フェイスブック上で騒いだりすることが、コミュニケーションの課題に置かれがちですが、本来は、そういうファッドなコミュニケーションをしなくても持続的に成長できるようにすることが、優れたコミュニケーションデザインであり、企業の目標であるべきだと思います。だから、優れたソーシャルメディア使いを目指すのではなく、優れたソーシャルアクションを実行していくこと。これが、僕が考える行動経営です。