ザ・クリエイティブ・インダストリーの確立
木村:さて、この連載は、「広告は変われるか」っていうハーバードビジネスレビューの特集に連動して始まったんだけど、広告は変われますか?と聞かれたらどう答えますか?
佐藤:嶋さんも書いてましたけど、その質問はちょっと意地悪ですね。クリエイティビティ、つまり今ないものを妄想してアイデアを生み出すスキルを持っている人材はこれからますます活躍の場が広がると思うけど、それが広告かどうかは関係ない。「脱広告」みたいな言葉も言葉遊びに過ぎない気がしますね。
木村:つまり、広告を「広く告げる」という狭義の概念でとらえたら、それは限界をむかえてる部分もあるかもしれないけど、もっと手口ニュートラル的な広義の概念でとらえるとすれば、ワクワクする未来が広がっているということだと思います。
佐藤:広告の未来という観点でいうと、僕は、「ザ・クリエイティブ・インダストリー」の確立を目指しているんです。
木村:ザ・クリエイティブ・インダストリー?「ザ」は必要なんですか?というよりなんですかそれは?
佐藤:ゲームウォッチが発売された当時には、ゲーム産業って言われてなかったと思うんですよ。30年前は、映画産業はあったけど、エンタメ産業という言葉はなかった。同じように、アイデア産業とかクリエイティブ産業というのは、今はないけど今後確立されるべきだと思うんです。
木村:アイデアをベースにしたビジネスを産業化するということですね。今の日本に一番求められているもののように感じますが、どうやって確立していけばいいんだろうか。
佐藤:僕は経済学部を卒業したんですが、マルクスやケインズを習っても、企業の収益は上がらないし、経済も成長しないと思うんです。社会で一番大切なのは、アイデアでありクリエイティビティ。この一見ふわふわしたものが心を動かし、人を動かし、お金を動かす時代なのに、それを教える専門機関がない。大学で教えるべきは発想とアイデアだと思うんです。