指示命令型コミュニケーションの限界

 近年、指揮統制型の経営はみるみる後退している。指示を出すだけの純然たるトップダウン型リーダーシップは、グローバル化や新技術、企業の価値創出の仕方や顧客関係のあり方の変化に伴い、その実効性が急速に失われている(囲み「リーダーが直面する新たな現実」を参照)。

リーダーが直面する新たな現実

ビジネスにおける5つの長期トレンドが、社内向け広報から組織内会話への転換を迫っている。

経済の変化
経済的に見てサービス業が製造業より優勢になり、知識労働がそのほかの種類の労働に取って代わった。これに伴い、情報を加工し、共有する高度な方法がますます切実に必要とされている。

組織の変化
企業のフラット化が進んでヒエラルキーが弱まり、価値を創出するうえで、第一線の社員がさらに中心的な役割を果たすようになった。それに伴い、横方向やボトムアップ型のコミュニケーションが、トップダウン型のコミュニケーション並みの重要性を持つようになった。

世界の変化
労働力の多様化と分散が進んだことで、文化や地理的境界を超えて前進するためには、流動的にして複雑なコミュニケーションが必要になった。

世代の変化
1980~90年代生まれのミレニアル世代や、それより若い労働者が社内で一定数を占めるにつれて、同僚に対しても上司に対しても同じように、活発な双方向型コミュニケーションを行うことを望むようになった。

技術の変化
デジタル・ネットワークのおかげで、ビジネスの世界では即座に相手につながることが当たり前になった。一方、ソーシャル・メディアのプラットフォームはさらに強力に、そしてどこででも使えるようになった。この2つの変化に伴い、以前のあまり対話型ではないコミュニケーション・チャネルでは不十分になった。

 では、この型に取って代わるのは、どんなモデルなのか。その答えの一端を、リーダーの社内コミュニケーション管理のあり方──リーダーから社員、社員からリーダー、そして社員同士の情報フローをどうさばくか──に見出すことができる。

 従来型の社内向け広報を、もっとダイナミックで高度なプロセスに改めなければならない。何より大切なのは、会話型のプロセスを導入することだ。これは21世紀の社内コミュニケーション事情を調査した我々の結論である。