イノベーションと名のつく取り組みであれば、何でも関わろう――そう判断するのは早計で、危険でもあるという。取り組みの成功と失敗の見込みを、初期の段階で判断する方法を紹介する。
近頃ではどの企業も、自社は革新的であるとアピールするようになった。優秀な人材を集め、投資家を喜ばせ、ブランドを強化することが目的だ。なかには本当に革新的な企業もあるが、そうでない企業も多い。
新たにイノベーションに取り組もうとしているリーダーや推進メンバーは、どうやって自分の組織が本気でサポートしてくれるかどうかを判断すればいいのだろうか。市場に恐れや不安、疑念をもたらすだけに終わるのか、それとも会社がきちんと責任を果たしてくれるのだろうか。今月のスローガンに過ぎないのか。その違いを理解していないと、自分のキャリアの脱線にもつながりかねない。
イノベーションへの態勢が整っているかどうかは、モチベーションとコンピタンスという2つの重要な要素によって決まる。これらの評価で自分が置かれている状況をかなり理解できるはずだ。次に紹介する単純なガイドラインを利用すれば、自分の組織や新しいイニシアティブを検証することができる。
●モチベーション――「イノベーションにどれくらい飢えているか」
リーダー
まずは、リーダーのモチベーションを把握することが先決だ。そのモチベーションはインセンティブによる外因的なものなのか、それともプロジェクトに対する情熱とコミットメントから生じる内発的なものなのか。イノベーションに成功する確率は後者のほうが高い。外的要因によるモチベーションを持つリーダーは、ほかのもっと良い条件を持ちかけられればそちらに乗り換える可能性があり、そうなれば取り組みはリーダー不在となってしまう。組織のトップにも注意が必要だ。たとえばイノベーションの取り組みが4年計画である場合、1年半ごとにCEOが交代する組織では取り組みを維持するのは難しいだろう。CEOの交代に伴ってイノベーションのリーダーが本流から外され、イノベーションとは名ばかりの重要でないプロジェクトに追いやられる可能性もある。
また、リーダーの評判や実績は、自分が置かれている状況を判断する手掛かりにもなる。
チーム
チームメンバーは、取り組みのビジョンに共感し、リーダーを信頼しているだろうか。そのチームは最高のメンバーで構成されているのか、それとも失敗した取り組みから移ってきたチームなのか。リーダーはどのようにチームのモチベーションを高めているのか。
恐怖心や欲望を利用してチームを動機づけようとするリーダーもいるが、そのようなやり方は必ず失敗する。最高のリーダーとは、チームと共同でビジョンを設定し、「それをどうやって実現するかはまだわからないが、我々のめざす方向はこれで間違いない」と正直に言える人である。
組織
組織がイノベーションを喫緊の課題とする理由は何か。業績の低迷、市場シェアの低下、あるいは中核事業の陳腐化などは、強い動機となる。差し迫った必要がなければ、中核事業との対立を乗り越えてイノベーションの取り組みを推進することは非常に難しい(経営陣が社内にイノベーションの文化を築いている場合は例外だが)。
CEOによる直接的支援は別として、ここで重要なのはリソースの配分である。中核事業から主要なリソースを借りる持続的で秩序立った仕組みがなければ、イノベーションは実行段階で失敗に終わる場合が多い。