●オンラインでグローバルな共創コミュニティを運営している企業は、最も優れた貢献者たちを毎年召集すること。彼らはダボス会議(世界経済フォーラム)に招かれているかのように感じるはずだ。すると互いにネットワークを結び、刺激し合い、いままで以上にその企業を大切に思うだろう。航空運賃程度の出費で、ブランドを向上できるのだ。

●共創ワークショップを運営する際には、参加者のひとりが次に来る新たな潮流を予言してくれるような「アハ体験の瞬間」を期待しないこと。その場で出されたアイデアをあとから収れんし、それらに通底する予期せぬ重要なテーマを見出すことが、最も肝心な作業である。

●ワークショップには幹部を参加させること。自社製品を改変したり、ハッキングしたり、その製品を使っていない消費者を前にすれば、設計やマーチャンダイジングの副社長の目からうろこが落ちるだろう。

●アマチュアのデザイナーが自分のために設計するのに対して、専門家は「ペルソナ」(ブランドを象徴する人物像)に沿って設計する。共創のパートナーには、製品の前にその人物像を構築してもらおう。写真や経歴、ライフスタイルのイメージなどを盛り込んで、可能な限り具体的なペルソナをつくり上げる。

●1にも2にも、プロトタイプだ。とにかくアイデアを具体化することに努めよう。そして破壊し、またつくり直すのだ。

やってはいけないこと

●顧客に自社の広告をつくってもらうキャンペーンは、共創ではない。それらの作品は、つくり手がその企業に抱いている偏見に基づいているだけだ。それに、この種のキャンペーンではたいてい、小遣い稼ぎで参加してくる広告のプロが勝つことになる。

●共創コミュニティをあまりに急激に、大きくしすぎてはいけない。独創的な人材は、個人単位で育成・後押しをする必要がある。センス・ワールドワイドは、2000人の独創的な消費者からなる招待制コミュニティを構築するまでに、12年かけている。

●オンライン・コミュニティを継続的に活性化させるために必要な作業を、過小評価しないこと。反復的なタスクや投票で参加者を消耗させてはならない。進行中のタスクがない時は、興味を引くプロジェクトを新たに立ち上げればよい。

●共創から生まれたアイデアを、既成事実として設計チームに提示しないこと。設計チームを疎外することになるからだ。むしろ、彼らを共創プロセスに関与させ、優れたアイデアを手に入れる方法として、あるいは新たな探求の場として共創を活用してもらおう。

●ばかげたアイデアに思えても、批判しないこと。それらは明確に定義された問題を解決するための試みであることが多い。

 以上である。シンプルだが、実行は簡単ではない。


HBR.ORG原文:A Co-creation Primer February 28, 2011

 

ステファン・スターン(Stefan Stern)
PR会社エデルマンの英国戦略担当ディレクター。以前はフィナンシャル・タイムズ紙の著名コラムニスト。ロンドンのキャス・ビジネススクール客員教授も務める。