本誌2013年9月号(8月10日発売)の特集は「集合知を活かす技術」。これに合わせ、HBR.ORGから集合知に関する記事6編をお届けする。第2回は、“共創入門”。企業がクラウドを巻き込み共創コミュニティを構築する際に、最初に留意すべき点を紹介する。
オープン・イノベーションや共創(コ・クリエーション)には賛成だ、と誰もが言う。私たちはみな、外部の知恵を取り込む「集合知」について聞いたことがあるし、次のような名言がプリントされたTシャツもおなじみだろう――「我々の誰ひとりとして、我々全員を合わせたほど賢くはない」
だが共創とは、実際のところ何なのだろう。共創を成功させるにはどうすればいいのだろうか? 共創は、新しい製品やサービスのためのアイデアを、それらを買ってくれる(と企業側が願っている)顧客とともに出し合うということだ。これは、「市場調査」をはるかにダイナミックで創造的なプロセスに変えるものだ(ちなみに、co-creationという言葉を普及させたのは、「コア・コンピタス」「BOP市場」で有名なC・K・プラハラッドである)。経営幹部が共創を取り入れようと決めるは簡単だ。しかし共創は、彼らがこれまでにキャリアを築いてきた主な方法とは相容れないことが多い。一筋縄ではいかないのだ。では、どこから始めるべきだろう?
私は最近、ロンドンのコンサルティング会社、センス・ワールドワイドの幹部と共創について有意義な会話を交わした。「会話」と言っても、私のほうはもっぱら聞き役だったので、これは共創と呼べるものではなかった。しかし、同社の最高経営責任者であるジェレミー・ブラウンと戦略部長のブライアン・ミラーは、いくつか素晴らしい示唆を与えてくれた。
「ブランドや製品を変える必要がある時には、それまでと同じことをよりうまくやればいい、というわけではありません」とブラウンは言った。「何か新しいことをやらなくてはいけない。消費者の独創性を活用するのです」。ブラウンとミラーによれば、同社は過去10年にわたって、グローバルなオンライン・コミュニティと各地でのワークショップを通して、共創を実現してきた。
その過程で同社は、共創において「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のガイドラインを確立している。以下に紹介しよう。
やるべきこと
●共創では、市場調査のために人を雇う場合のノウハウは全部忘れなくてはならない。市場調査では、「ユーザー・プロフィール」のベルカーブの真ん中にいる人たち(つまり最も平均的なユーザー) が対象となるが、共創では、自社製品を拒絶する人や過激なユーザー、ハッカー、ブロガーが求められる。彼らが設計やマーケティングの経験を持っていれば、なお都合がいい(従来型の市場調査では、専門的な意見を持つ人間は毛嫌いされる。センス・ワールドワイドはそういった人を探し求める)。
●共創のパートナーの参加を募る際には、オープンな姿勢を持ち創造性を発揮すること。センス・ワールドワイドは、異教徒のまじない師や新聞の編集者、パイロット、テレビ界の大御所、処方薬中毒患者などを採用している(注 :まじない師は空気を浄化する儀式を行っていたため、空気清浄製品のプロジェクトで意見を尋ねた)。
●共創は、強固なコミュニティを築けば最もうまく機能する。参加者はアイデアを共有し、互いの仕事を利用し合い、批評し、賞賛し、競い合う。聡明で独創的な人材を継続的に関わらせるには、金銭的報酬以上のものが必要だ。賞賛し、アイデアを正当に評価し、彼らの貢献の跡をはっきり示すことである。