2. 「Internet of Things」に求められる「デザイン」と「アルゴリズム」の融合について

 今後、急激に市場が拡大すると言われている「Internet of Things(モノのインターネット化)」の時代において、「新しい意味的価値を生み出すデザイン」と「データサイエンティストが開発するアルゴリズム」の融合こそが、新たなイノベーションを生み出す領域ではないかと筆者らは考えている。つまり「デザイン」と「アルゴリズム」の交差をいかに創り出せるか、やや極端に言ってしまえば、図のように「デザイン思考家」と「データサイエンティスト」が混じり合う場をいかに生み出せるかが鍵となると考えている。

 ユビキタス・コンピューティングの祖と言われるパロアルト研究所のマーク・ワイザーの論文(注2)には以下のような一文がある。

「良く出来たハンマーは大工の手の中におさまり、(存在を感じさせないように)消えてしまい、関心事に集中できるようになる。コンピューターもこのように消えてしまうようになってほしい。」

 今後、求められる「Internet of Things」のビジョンは「遍在するコンピューター」では決してない。現実世界をパソコン画面やスマートフォン画面の中に押し込めるのではなく、「コンピューターのほうが環境にすっかり溶け込み、消えてしまうような、ビットからアトムへシフトした暮らし」であろうと筆者らは考えている。つまり、歯磨きをしたり、靴をはいたり、電球をつけたり、洋服を脱いだり、運動をしたり、ソファーに座ったり、お風呂に入ったり、ペットと散歩したりといった日常生活の自然な行為が、自然とコンピューターを操作することにつながるということである。このためには、人間の行為にフィットする「デザイン」と「アルゴリズム」をいかに上手く融合できるかが、「Internet of Things」時代のイノベーションには重要になってくると筆者らは考えている。