3. 「Internet of Things」時代のスタートアップについて

「Internet of Things」のイノベーションを生み出しているのは、大手企業というよりも、ベンチャー発のほうが目立つのではないだろうか。国内でもサウス・バイ・サウスウエストで発表され、Google Glassの対抗馬として注目されているテレパシー等があるが、ビジネスとして成功している代表格はツイッターの創業者で誇り高きハッカーでもあるジャック・ドーシーが率いるモバイル決済システムのスクウェアであろう。スクウェアは、小さな白い物体をスマートフォンに装着するだけで、決済システムを導入し運営する煩わしさから人を開放してくれる。つまり、今までクレジットカードを取り扱うことができなかった多くの中小の事業者やさらに個人に対してまで、カード決済による料金収納の道を拓いたという意義はかなり大きい。企業だけでなく個人事業や個人間でも利用できるのが特徴だろう。これを使えばフリーマーケットでクレジットカードを受け付けたり、宴会の会費をクレジットカードで参加者に支払ってもらったりするようなことも可能になる。既に20万事業者が導入し、年間想定取引額は10億ドルと言われている。2012年8月にはスターバックスとの出資提携が話題になった。

 スクウェアが普及した理由は、まさに「デザイン」と「アルゴリズム」を上手く交差させたことにあると考えられる。つまりスマホに装着できるような小さなカードリーダーを開発し、ユーザーにとって “モバイルペイメント”という全く新しいUXデザイン(=ユーザー・エクスペリエンス・デザイン)を提供しつつ、高度なデータ暗号化のアルゴリズムにより、決済取引を公衆ネットワーク上で大量に稼働させるシステムを構築したことである。またスクウェアは、小さなカードリーダーとクラウド技術を活用することで“スマレジ”と呼ばれる、タブレット端末を利用した超低価格かつ高機能なPOSレジ、“スクエアスタンド”を提供している。事業主にとって、高価なPOSシステムを導入することなく、売上情報や商品情報、顧客情報などが全部クラウドサーバで管理されるため、リアルタイムに売上分析や在庫管理ができる。このようなサービスがあることも事業主側に支持される理由であろう。今後はこのPOSレジのクラウド技術を活用することで事業主に対して収益性の分析やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)などのコンサルティングをクラウド上で提供することも可能となるかもしれない。