リサーチをめぐるジレンマ

 顧客の態度や行動を左右するものを特定し、それに影響を与えることはマーケティングの最大の課題である。企業の経営幹部はこれまで、調査による定量データ(顧客満足度やブランド・イメージの追跡など)と、フォーカス・グループや面接から得た定性的なインサイト(洞察、見識)の組み合わせに依存してきた。残念ながら、どちらの種類の調査も、急速に薄れる顧客の記憶に頼っているという根本的な欠陥がある。

 企業のコミュニケーション活動に対して消費者の記憶はえてして不正確なものだ。放映されていないのに、ある企業のテレビ広告を見たと答える例も珍しくない。記憶が間違っていない場合でも、状況のバイアスがかかることが多い。たとえば、大きな買い物をした人は、買ってよかったと思うためにその購入経験をポジティブなものとして思い出しがちである。

 インターネットを使った調査ツールであれば、記憶が薄れたりバイアスがかかったりする前に顧客の経験をほぼ即座に把握できるので、このような問題に悩まされることは少ない。ただし、それが使えるのはオンラインでのやり取りに限られ、顧客が企業やブランドと接触するうちのわずか15%にすぎない。