ラグジュアリーブランドこそオープン化する意味がある
ここまでネットとソーシャルメディアの普及によって人々が本質的なライフスタイルを求めるようになった姿を見てきました。すでにいくつかのラグジュアリーブランドはこの流れに対応すべく、ネット上でブランドのオープン化を進めたり、ホテルのロビーを開放的にしたりと、さまざまな試みを行っています。
これはエクスクルーシブであることに価値を見出していた旧来型のラグジュアリーにとって、どのような意味を持つことになるのか。ここまでの検証を振り返って言えるのは、「本物の高級品」を自負するラグジュアリーブランドこそ、オープン化する意味があるのではないかということです。
実際、ファッションブランドの流通過程における徹底したオープン化を実現した前出のブルーノ・ピータースは、AFP通信の取材に、「近いうちに透明性が高級ビジネスにとって不可欠になる。対価を払う唯一の理由は品質とノウハウだから」と答えています。
ピータースと同様に、前出の菅付氏もラグジュアリーブランドの未来をこう予測します。
「ライフスタイル全般で本質的なものを求める人々の要求に応えるためには、ブランド固有の『物語』や『伝統』といった『中身』を魅力的に見せていかなければ、消費者には届かない。さらに言えば、これからファンション、美容、家電、そして車といった多くの産業で『どんなライフスタイルを提示するか』が問われるようになる。すると、生産者が持つライフスタイルのスタンダードが製品やサービスにますます反映されるでしょう。つまり、作り手たちのそれぞれがハイ・スタンダードなライフスタイルを送っていないと勝てなくなるのです。それが出来るかどうかが、中身化する社会におけるラグジュアリーブランドの命運を決めると思います」
次回は、ソーシャルメディアの影響で起こったもうひとつの潮流、「サステナブル」を人々が求める時代に、ラグジュアリーブランドがどう変化を遂げていくのか探求します。
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