2012年14代目クラウンの発表会で、「ピンクのクラウン」が登場し大きな注目を集めた。あこがれのステータスだったクラウンが「いつかはクラウン」から「ピンクのクラウン」へとメッセージを変えたのだ。その背景にはいったい何があるのだろう。
前回はソーシャルメディアの普及により人々が本質的なライフスタイルを求めるようになっているなかで、エクスクルーシブであることに価値を見出していたラグジュアリーブランドが、多くの人にシェアされることを目指し、かつてないほど開放的に変わりつつある現状を紹介しました。
一方、ラグジュアリーブランドに変化を促す新たな潮流は、ソーシャルメディアの台頭だけではありません。グローバル化の弊害や環境問題がクローズアップされている今の世界で、各国のブランドはどのようにサステナブル(持続可能)な企業活動を実現していくのかという課題にも直面しています。
現代でもっとも価値あるブランドのひとつであるAppleは、その代表例でしょう。製品のほとんどが中国で作られていることで有名な同社は、そのサプライヤーの大半を「Appleのサプライヤー」としてホームページ上で公開しています。サイトからは部品供給や組み立てを担当する上位200社の詳細なリストもダウンロードでき、Apple製品の製造過程の実態を知ることができるようになっています。
同様に、ファストファッションブランドのH&Mも、自社のホームページに詳細な「企業責任」という項目を掲載。「手頃な価格」と「環境への影響低減」が両立していることをアピールしています。
また、スポーツブランドのPUMAの取り組みはより挑戦的でした。2011年11月にPUMAは、企業活動における環境負荷を貨幣価値に換算した「環境損益計算書」を発表。いわば、「商品の製造で今年はこれくらい環境に影響が出ました」とお金に換算して公開したわけです。

長野県小諸市の「ルイ・ヴィトンの森」プロジェクトの詳細は、『LOUIS VUITTON FOREST』として1冊の写真集にまとめらている。撮影は写真家の瀧本幹也氏。
その資料によると、前年度に生じた環境への影響は、温室効果ガス排出、水資源利用、土地利用、大気汚染、廃棄物などの分野において約1億4500万ユーロ(約192億円)にも上ったそうですが、この報告にもとづいて改善計画を発表したPUMAへの非難の声は少なく、むしろブログやツイッターなどで賛意を表明する人が続出しました。
ラグジュアリーブランドではルイ・ヴィトンの取り組みがよく知られています。パリ本社が中心となり、レザー製品の素材調達の見直し、エネルギー消費量が少ない船舶輸送の推進、工場運営の環境負荷軽減などをグローバルに展開しているのです。日本でもその一環として、2009年に長野県小諸市に森林再生プロジェクト「ルイ・ヴィトンの森」を設立しているほか、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市の支援活動も行っていますね。