③ソリューション(解決策)
続いて、どうすれば、そのニーズを満たすことができるのか、問題を解決することができるのかについて、具体的に述べていきます。安倍首相は、かつて日本が行ったスポーツ・ボランティアの世界派遣に触れながら、日本が準備する新しいプランについて説明しました。
「翌年、日本はボランティアの組織を作りました。広く、遠くへの、スポーツのメッセージを送り届ける仕事に乗り出したのです。以来、3,000人もの日本の若者が、スポーツ・インストラクターとして世界で働きました。訪れた国は、80カ国を超えます。この活動を通じて、100万を超す人々の心に感動を届けたのです。
敬愛するIOC委員の皆様に申し上げます。2020年に東京を選ぶとは、オリンピック運動の一つの新しい、強力な推進力を選ぶことを意味します。なぜならば、私たちが実行しようとしている「スポーツ・フォー・トゥモロー」という新しいプランのもと、さらに多くの日本の若者たちが、世界に出て行くことを意味するからです」
④ビジュアライゼーション(視覚化)
WHYとHOWを述べた後に、未来像を視覚化します。ビジョンを実現するための具体策を実行したあかつきに、どんな未来が待っているのかをありありと描いていきます。安倍首相は、世界に散らばっていく日本の若者たちが、具体的にどんな活動を行うのかに触れました。
「学校を作る手助けをするでしょう。スポーツの道具を提供するでしょう。体育のカリキュラムを生みだすお手伝いをすることでしょう。やがて、オリンピックの聖火が2020年に東京へやってくるころまでには、彼らはスポーツの喜びを、100カ国を超える国々で、1,000万人にならんとする人々に、直接届けているはずなのです。」
⑤アクション(行動)
最後に、ビジョンの実現のための行動を呼びかけます。直ぐに実行できる、最初の一歩を呼びかけることが大切です。安倍首相は、IOC評価委員に対して、東京への投票を呼びかけました。チームジャパンのプレゼンテーションは、竹田委員長が締めくくることになっているので、表現が遠回しになっていますが、通常は、よりダイレクトに行動を呼びかけます。
「今日、東京を選ぶこと。それはオリンピック運動の信奉者を選ぶことを意味します。情熱と誇りに満ちた、強固な信奉者を選ぶことに他ならないのです。スポーツの力によって、世界をより良い場所にせんとするために、IOCとともに働くことを強く請い願う。そういう国を選ぶことを意味するのです。皆さんと働く準備が、私たちにはできています。」
IOC評価委員の信頼を勝ち取る原動力となったチームジャパンのグローバル・ビジョンは、効果的な流れで語られたからこそ、心を揺さぶる力を持つことができたのです。
2011年に懇談したクリントン大統領のスピーチライターを務めたヴィンカ・ラフール氏は、アメリカ大統領スピーチは、ほとんどの場合、この流れで原稿を書いていることを私に話してくれました。実際に、2012年の大統領選挙に際して、オバマ大統領もこの流れに沿ってビジョンを語っています。(詳しくは「アメリカ大統領選挙に学ぶリーダーのスピーチ」2012.11.13を参照。)