アーレンツCEOのアップル移籍でビジネスパーソンからも注目を集めるブランド「バーバリー」は、ラグジュアリー業界の常識を覆すほどのデジタル化によって成功を収めた。企業と生活者がダイレクトにつながるソーシャルメディア時代において、デジタルを活用した“強いブランドづくり”の秘訣に迫る。
徹底したデジタル化によってブランドの若返りを実現し、劇的な復活を遂げたバーバリー。前回はそのイノベイティブな試みの数々を振り返り、フラットなオンライン空間で人々の関心をラグジュアリー消費につなげていくためのヒントを探りました。
そこでキーとなっているのは、ソーシャルメディアの本質である双方向型のコミュニケーション施策です。例えば、クローズドだったファッションショーをライブ中継というかたちでネット上に開放しただけでなく、ツイッターやフェイスブックのアカウントを通じて、世界中の視聴者がリアルタイムで賞賛も批判も等しく拡散できる仕組みを取り入れたこと。
エクスクルーシブ(選ばれた人向け)であることに価値を見出してきた従来のラグジュアリーブランドにとっては、これだけでも画期的な対応です。しかし、バーバリーはそこから、さらに改革を推し進めていきました。それはソーシャルメディアの拡散力とeコマースの連結です。
バーバリーが起こしたファッション業界の革命とは?
ファッション業界では通常、ショーで発表されたコレクションが実際に店頭に並ぶのは約半年後とされています(秋冬アイテムなら1月に発表され、7月頃から店頭に並び始める)。ところが、アマゾンに代表されるようなワンクリック注文・即日配送に慣れてしまった今どきのネットユーザー、特にデジタルネイティブ世代にしてみれば、予約から配送まで半年も待っていられないという感覚が一般的でしょう。

バーバリーのeコマースサイトでは、新作ファッションショーの終了直後から披露された新製品の予約注文ができ、実際に店頭に並ぶよりもはるかに早く届けられる。写真は2014年のメンズ秋冬コレクション。
そこでバーバリーは2010年から、ライブ中継の終了と同時にモデルたちが身に付けていた新商品のオンライン予約を、「Runway Made to Order」として期間限定で実施。しかもそれだけでなく、予約から7週間ほどで世界中の注文者の手元に届くようにすべての供給ラインを見直したのです。
ラグジュアリーブランドのプロモーションを多く手がけるグローバルブランディングカンパニー「SIMONE」代表のムラカミカイエ氏によると、バーバリーが行ったeコマースにおける予約から配送までの大幅な期間短縮は、まさに「ファッション業界の革命」とでも言うべきインパクトがあったそうです。