競合を歓迎しています。
すでにシミュレーションもしています。

――今後、競合が出てくることは想定されていますか。

山口:競合が参入することで、世の中にオンライン学習が急速に浸透して、社会が盛り上がるという意味では、基本的に競合が出てくることを歓迎しています。ただ、我々のモデルを同質化しての新規参入はもしかしたら難しいのではとも思っております。

 その理由は、まず、動画コンテンツを作りオンライン動画サービスを構築することは可能ですが、我々は、既存顧客である大学への営業による広告収入や既存の高校渉外部隊によるプロモーションというように、営業コスト・プロモーションコストの中抜きにより、有料980円の収益設計が実現できているので、そこへの参入障壁は高いと思っています。

 次に、予備校経営をしているところや教育産業のプレイヤーの視点で考えてみると、利用者から月々数万円を頂いて成り立つビジネスモデルであるため、なかなか980円という低価格のビジネスに踏み込んでこられないのではないでしょうか。まさにクレイトン・クリステンセン教授がいう「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまう可能性も考えられます。実際に、大手予備校は多くの校舎・大きな組織を抱え、彼らの戦略は持続的イノベーションです。つまり個別指導や東大コースなど、プレミアム化を促進しています。従来の家電製品のように機能を追加して高付加価値化にシフトしているような気がしますので、980円使い放題では採算が合わないのではと思います。

 一方の中堅、小規模予備校は、ウェブのケイパビリティと財務力がないので事業転換は難しいはずです。

 またリクルートは54年目を迎えますが、同社で2番目に古い進学事業をもっている優位性は大きいと思います。リクルートがいきなり受験産業に参入したというより、高校生・高校に進学情報を44年間提供し続けてきたブランドと信頼があるからこそ、受け入れられていると考えています。そしてオンライン動画やウェブサービスを構築できるネットサービスへのケイパビリティや人的リソースの蓄積もあります。

 一番脅威になると思われるのは、当面の採算を度外視して、社会的意義で参入してくる、体力のある異業種の大手企業でしょうか。ただし我々もたとえ価格勝負で参入されても負けないように、いくつかのシミュレーションはすでにしています。