自己成長を考えなくなったことが自分の成長だと思う

――具体的にはどんなことをされていたのですか。

 迷走していました(笑)。とりあえず中国語を勉強しよう、これからはアートの時代だから絵を学ぼう、発想のために右脳を磨こう、と。それから、週末は常に本を読んでいました。何かの役に立つと思って、経済学の教科書を3ヵ月間読み込んだこともあります。悪いことではないし、すべてがムダではありませんが、目的がないので効率が悪いんですね。

 ミッションの達成に突き進む2人と、なんとなく「どうすればいいんだろう?」と悩んでいる自分。投入しているリソースが違うので、何をしても彼らに適わないのは当然だったと思います。彼らは100%、私は違いました。その差があらゆる場面で出ていたと思います。

 社員とのコミュニケーション1つとっても、山口と山崎は100%迷いなく突き進むので、ついていきたいし、支えたいと思います。一方、私は自分自身の成長なんてものを考えているわけです。そんなやつについていきたい、人生を賭けたいと思うわけがない。

――ミスターミニットの社長に就任されて、その気持ちに変化はありましたか。

 経営者になったいまは、自己成長なんてまったく考えないですね。社員の生活も背負っていますから。この会社を成功させたいという気持ちだけです。極端な話、自分が成長しなくても、会社が成長すればいいとすら思っています。それがきっと、山口や山崎が持っていて、当時の私に足りなかったことです。自己成長を考えなくなったことが、自分の成長だと思います。

 それまでは、「自分はこれに100%賭ける!」というものが見つかっていませんでした。どこか集中できていなくて、不安だからとりあえず本を読んでみたり、芸術の学校に通ってアートセンスを磨こうとしてみたり、これというものが決まっていないのでぶれるんです。ぶれているから効率も悪い。本当は必要のないこともやっていました。

 いまはやりたいことが明確です。この会社をよくしたいということだけですから。そこに自分の100%のリソースを突っ込めていると思います。いまの自分を一歩引いた目線で見ると、なんでもかんでも闇雲に手を出していた当時より、よっぽど効率的だと思います。

*次回は5月27日(火)公開予定。