新たな成長機会を見つけるための問い

1. 顧客が解決に苦労している問題は何だろうか?
 スティーブ・ジョブズの有名な言葉がある。「顧客が望むものを明らかにするのは、顧客の仕事ではない」。その通り、それはイノベーターの仕事である。だれかが時間や費用をかけて重要な問題を解決しようとしていて、既存のソリューションに言葉や行動で不満を表明している場合、それはまたとないイノベーションの機会である。

2. 既存のソリューションを利用するためのスキルや資金、アクセスが欠如しているために、市場から締め出されている顧客はだれか?
 これまで実証されてきた破壊的な成長の方法は、既存の市場で競合企業と激しく競争するのではなく、上記の問いのように我々が「無消費(nonconsumption)」と呼んでいる状況をめぐって競争することである。人々が長年苦労してきた物事を、より単純または便利、あるいは安価な方法で提供することが成長への最善の道である。既存の市場から締め出されていた人々に対してそれを行うことで、イーベイ、グーグル、サウスウエスト航空は今日の地位を築いた。

破壊的変化の脅威を特定するための問い

3. 利用者があまり重視せず支払いも望まないような過剰な機能を、自社は提供しているだろうか?
 破壊的イノベーション理論の重要な教えに、「顧客ニーズの変化よりも、企業側のイノベーションのほうが速く進んでしまう」というのがある。人はだれしもよりよい製品を好むが、もしも顧客に使いこなせない、または割高であると感じさせる高度な機能やサービスがあるならば、よりシンプルで低価格のものを提供するチャンスを他社に与えてしまう。

4. もし自社に対して破壊的変化をみずから仕掛けるとしたら、何をするだろうか?
 破壊的イノベーションの理論が世に出て20年近く経つが、いまもなお、破壊的変化に足をすくわれる企業があまりにも多い。特にまずいのは、破壊者が目の前にいるのに、市場リーダーはその存在や影響を軽視しがちである点だ。ブロックバスターのCEOは2008年になってもこんな発言をしている。「正直に言うと、みんながネットフリックスに夢中になる理由が私にはよくわからない。わが社がこれまでに提供していなかったり、提供できないようなサービスは、同社には何ひとつないはずだ」。自社を破壊するのは何かという単純な問いとともに、破壊的なビジネスモデルを進めている企業がいないかどうか探してみよう。それが破壊的変化の脅威に対する最低限の防御となるだろう。