実際のところ、私たちはどのようにメディアを使い分けているのだろうか。「マルチスクリーン行動分析」で、分析対象者の一人ひとりが、1カ月間、いつ、どれくらいのテレビ・パソコン・スマホというデバイスを利用したか、秒単位の行動ログデータ取ってみると、かつてのデモグラフィック的な分類と違う姿が見えてきた。グーグルのマーケティングチームの好評連載、第3回。
前回(第2回)は、日々メディア環境が変化する中で、マーケターの過去の経験による予見が結果的にバイアスになってしまう可能性を指摘した。また、それを避けるには変わりゆく「今」の状況を常に可視化し、判断することが重要であると述べた。
そこで今回は、多様化しているメディア環境の中で「今」の生活者がどのように情報に触れ、使いこなしているのかについて、検証していきたい。
様々な方法で情報を得ている生活者
今、明日の天気を知ろうと思ったら、あなたはどうするだろうか。

多田 翼(ただ・つばさ)
Google 日本法人 マーケットインサイト マーケティングリサーチマネージャー
2013年にグーグル株式会社に入社。クロスメディア環境における広告効果測定のための調査手法開発、広告効果測定調査の企画から分析、生活者やグーグルプロダクトユーザー分析など、特にモバイル領域の調査手法開発や分析に従事。前職はマーケティングリサーチ会社。定量調査を中心にマーケティングリサーチを専門にし、新規事業として調査パネル開発を担当。
テレビの天気予報を見る。あるいは、パソコンから天気情報サイトにアクセスする。または、スマートフォンから、Google Now のような天気情報を届けてくれるアプリで確認する方法もある。明日の天気という情報を知るための方法は様々だ。そんなこと当たり前だと思われるかもしれない。
ここで、考えてみて欲しい。今日本人の43%*1は、テレビ、パソコン、スマホの全てを使うことができる環境にある。同じ天気という情報を、どのスクリーンであっても獲得できるのだ。しかし、その中でどの方法を選んでいるのかということは、スマホの普及率やテレビ番組の視聴率を見てもわからない。
「あなたは、どのようにして明日の天気を知りますか」とアンケートで聞くこともできるだろう。しかし、多くの人はテレビもパソコンもスマホも使うと回答し、本当のことを知ることは難しい。
ある特定の情報を――天気に限らず新商品についても――生活者はどうやって得ているか。これを知ることは、昔からマーケターの夢だったと言える。
かつては、その方法はなかった。そのため、アンケート結果などから、20代の女性はこういう傾向がある、40代の男性はこういう傾向が相対的に強い、という統計的な分析しかできなったというのが現実である。
ところが、前回も紹介した行動ログデータの集積であるシングルソースデータ*2は、一人ひとりの行動の類似性から生活者を分類することが可能となる。
このような分析をすると、いわゆるデモグラフィックによる強制的な分類とは全く違う様相が見えてくる。