スマートフォンの普及によって、購買行動や購買プロセスが大きく変わったのは周知のとおりだ。ここでマーケターが見逃してはならないのは、生活者の意図に触れる大切な瞬間「Micro-Moments」をどうとらえ、活用するかである。好評連載、第8回。

 

スマートフォンの普及で変わったこと

 日本人の50%以上がスマートフォンを手にするようになった現在、生活者の生活環境が大きく変わってきている。今回は、スマートフォンのある生活が当たり前の今、我々マーケターがこの変化をどのように受け止め、どのような戦略が必要となるか考えてみたい。

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写真左:小澤 未生(おざわ・みお)
グーグル株式会社 ビジネスマーケティング部 シニアマーケティングマネージャー。アドワーズ・YouTube・グーグルディスプレイネットワークを含む幅広い広告商品のマーケティング業務を担当。大学では電気電子工学専攻修士課程を修了し、ソニー株式会社にソフトウェアエンジニアとして入社。後にデジタルカメラ等の商品企画職を経て、北米拠点にてマーケティング職に従事し、帰国後2013年にグーグルに入社し現職に至る。

写真右:野津 一樹 (のつ・かずき)
グーグル株式会社 SMBマーケティング部 マーケティングマネージャー。京都大学を卒業後、電通に入社。30ヶ国以上の海外展開に関するマーケティング戦略・コンセプト策定、実施に従事した後、BCGにてメディア、ヘルスケア等の様々な業種のコンサルティング業務に携わる。2012年グーグルに入社、日本でのB2BにおけるGoogleプロダクトの普及を推進するマーケティングを展開、DMA Echo Gold Awardなど様々な賞を受賞。

 例えば、ドライヤーが故障し、買い替えなくてはならない場合、生活者はどうするか?昔は電気店に足を運んでいたが、今や「新しいドライヤーを買いたい」という思いを実現する手段が多数存在する。パソコンからの購入はもはや当たり前であり、スマートフォンで検索、比較して購入に至ることも多くなっている。事実、日本での全オンラインショッピングのうち既に49%がスマートフォン経由だというデータも存在する(注1)。

 また、スマートフォンで検索した後、パソコンで購入する場合もあれば、パソコンやスマートフォンで調べた後、店舗に足を運んで購入することもあり得る。このように、スマートフォンの普及によって、生活者が「何かをしたい」という意図を実現するための行動の種類が増えている。

マーケターにとって見逃せない瞬間「Micro-Moments」

 購買プロセスにおいて、生活者の行動の種類がウェブやスマートフォンで増える――この現実をマーケターから見れば、生活者の「意図」に触れる瞬間が増えたことになる。グーグルでは、このような瞬間を「Micro-Moments」と呼んでいる。これは生活者に「何かをしたい」という意図が生じたとき、すぐに目の前にあるデバイスを使って調べる・買うといった行動を起こす瞬間を意味する。そしてこの瞬間は、生活者が何かを決断したり、ブランドに対する好みを形成したりする大切な瞬間でもあると考えている。

 Micro-Moments が格段に増えたことにより、マーケターにとって、生活者の「意図」を理解し、活用するチャンスも増えた。では、これをマーケティングに活かすために必要なことは何だろうか。それは3つのステップに分解できる。