2014年6月、ハーバード・ビジネススクールが同校初のオンライン講座〈HBX〉を立ち上げた。他のオンライン講座と大きく異なるのが「生徒間のコラボレーション重視」という強い信念だ。それを可能にする仕組み、そして開講1年を経ての成果と教訓を教授陣が報告する。
2014年6月にハーバード・ビジネススクールは、新たなオンライン教育プラットフォーム〈HBX〉を開講した。
当時、他の多くのオンライン講座で主流となりつつあったのは、個人ベースでの受動的な体験の提供だ。生徒は基本的に、専門家による講義を主軸としたストリーミング動画を見ることで学ぶ。有名教授を起用すれば講義は刺激的になるかもしれないが、この受動的で個人的な学習体験を我々HBSの教授陣は変えたかった。
そこで、以下の目的をふまえてカリキュラムを設計した。
●現実のビジネス課題の解決を重視する
実在のマネジャーたちによる、実際の課題をめぐる議論を動画に取り入れて講座の主軸とする。それによって生徒は、最も抽象的で難解なコンセプトについてもその適用可能性を理解しやすくなる。
●アクティブ・ラーニングを促進する
生徒には受け身の姿勢でただ動画を見続けるのではなく、能動的に学びの場に関与してもらう。授業中、生徒が何らかの発信をしない時間が3~5分以上続かないようにする。
●交流型・協働型の学習を促進する
生徒には講義中、他の参加者たちと定期的に、有意義な交流をしてもらう。協働は学習意欲を高めるだけでなく、発見のプロセスに深く関与させることにつながる。
HBX開講後、オンライン学習における交流と協働に関して我々が学んだ最も重要な教訓を、以下に報告したい。
①協働は自然発生しない
生徒間の交流を促進する前提条件として、最初に互いを知ってもらう必要がある。そのため我々は、参加者たちがバーチャルで知り会える仕組みを設けた。生徒には事前に自分の写真と公開可能なプロフィールの提出が義務づけられ、提出するまで講座のコンテンツに目を通すことができない。このシンプルな規定には大きな意義がある。生徒は自分のプロフィールをアップロードした後、平均40名ほどいる他の受講仲間たちのプロフィールに目を通す。典型的なオンライン講座ではトップページで教材が紹介されるが、HBXでは最初に生徒たちとその世界各地の所在地が示される。このささやかな仕組みが、その後に緊密な協働が育まれる素地となった。