⑥従来型の教室で生じる一部のバイアスや態度は、オンラインでの協働では避けられる
直接顔を合わせての協働には、もちろん利点もある。より密に関わることができ、より人間的でリアルな交流ができる。しかしオンラインでの協働にもメリットがある。生徒たちが直接対面する従来型の教室では、ある種のバイアスや態度が(しばしば意図せぬうちに)助長されるが、オンライン上の協働ではそれらが解消されるのだ。
特に目立った変化は、男女の性質に関するものだ。開講後最初の生徒たちの中で、女性が他者と質問および答えをやり取りする頻度は男性より2倍近く高かった。オンラインにおける女性の関与率の高さは、実際の教室で見られる光景とは反対だ。何がこのような違いやバイアスを生むのか、オンラインでの他の状況にも共通するのか、などは今後も掘り下げて検証していく価値がある。
さて、HBX COReの最初の講座は、どんな結果に終わったのか。オンライン講座を評価する主な指標には、修了率、受講者の満足度および関与度がある。これらの成果は明らかであった。先述したようにムークの修了率は1桁台が多いなか、COReでは85%を超えた。満足度スコアも高く、参加者の80~90%が授業の内容と指導に対して5点中4か5の評価を与えた。教材への取り組み意欲、および生徒間の関与度も非常に高かった。すべての修了者は受講期間に授業の分析と感想を定期的に寄せてくれたし、ほとんどの生徒がメンバー間の(任意の)ディスカッションに参加した。これらの傾向は、初回以降のCORe講座でも同様であった。
以上が、HBXの初の試みから得られた主な教訓である。この他にも我々は、たとえば「楽しい授業」にすることの大切さを学んだ。また、参加メンバーをできるだけ多様にすることも重要だ。多様性によって、生徒は(自分の知らない知識を持っているであろう)他者の言葉により深く耳を傾けるようになり、学び合う意欲を高める。オンライン特有の諸々の特徴について、我々はHBXを通して探求を続けている。
交流型学習をオンライン講座の主軸の1つとする――これがHBXにおいて下された、確固たる決断だ。交流と協働に基づく学びが秘めるポテンシャルは、一般的なオンライン教育ではまだ認識されていない。しかしこれは、注視に値するものだ。
HBR.ORG原文:Business School Has Learned About Online Collaboration From HBX April 14, 2015
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バラット・アナンド(Bharat Anand)
ハーバード・ビジネススクールのヘンリー・R・バイヤーズ記念講座教授。経営管理論を担当。HBXの取り組みを主導し、ハーバード大学の無料オンライン講座〈ハーバードX〉の運営委員も務める。
ジャニス・ハモンド(Janice Hammond)
ハーバード・ビジネススクールのジェシー・フィリップス記念講座教授。生産管理論を担当。
V・G・ナラヤナン(V.G. Narayanan)
ハーバード・ビジネススクールのトーマス・D・キャサリー記念講座教授。経営管理論を担当。