1.付箋は場所を取り、やや雑然とした印象を与えるため、(貼られた紙面や物の)環境になじまない。したがって人間の脳は、「付箋を取り除きたい」と判断する。

2.上記1が理由で、人はまず最初に付箋に注意を向ける。付箋を無視するのは難しい。

3.個人的なメッセージが書いてある(実験でのグループ②とグループ③の相違点)。

4.そして何より、付箋は「1人の人間が、別の大切な誰かにメッセージを伝えている」ということを象徴している。たっての頼み事や特別な依頼のような印象を与えるため、受け手に「自分は重要な存在なのだ」と感じさせる。

 ガーナーは、付箋の効果についてさらなる調査をせずにはいられなかった。2度目の実験では、空白の付箋も使って以下の方法でアンケートを配布した。

グループ①が受け取ったアンケート用紙には付箋が付いており、そこには1度目の実験と同じ手書きのメッセージが書かれている。

グループ②のアンケート用紙には、何も書かれていない付箋が付いている(効果が付箋そのものにあるのか、それともメッセージにあるのかを検証するため) 。

グループ③のアンケート用紙には、付箋は付いていない。

 結果は以下の通りだった。

グループ③:34%がアンケートを提出した(最初の実験結果に近い)。

グループ②:43%がアンケートを提出した。

グループ①:69%がアンケートを提出した(最初の実験結果に近い)。

 実際に効果を発揮するのは、どうやら付箋そのものではなく、付箋によって表現されるもの――相手とつながっているという感覚、作業の意義、そして個人性のようだ。「アンケートの送り手は、(アンケート用紙ではなく付箋に書くという)特別な方法で、“他ならぬ私に対して、個人的に”助けを求めている」と感じさせるのだ。

 ただし、依頼の順守について考える際には、実際に提出したかということの他にも検討すべき点がある。依頼を実行する早さ、そして作業の質だ。ガーナーは実験によって、追加のアンケートに付箋を付けると提出が早まるかどうかを調べた。さらに、付箋の有無によって回答者が記入する情報量が違うかを測定した。結果は次の通りである。