数値化できるものをよりも大切なものがある
ビジネススクールには行きたいけれど、2年も仕事を離れるのは長すぎると言う人がいます。現在のように急激に事業環境が変化する時代に、2年間も仕事を離れるリスクは高い。HBSは2年という期間についてどうお考えになっていますか。
フルタイムの2年間の教育を変える気はまったくありません。HBSには、アントレプレナーシップ教育が充実しているからです。先ほどお話ししたフィールドプログラムのなかには、チームでゼロからビジネスを作り、1ドルでもいいから儲けなさいというものがあります。アントレプレナーシップを専門にする教授もたくさんいますし、ビジネスコンペが頻繁に行われていて、素晴らしいアイデアには資金がつけられます。さらに、24時間開いている新しいアイデアを立ち上げる「アイラボ」(i-lab)という環境も用意されています。おそらく実際にHBSに来てみたら、新しいアイデアを考え、ビジネスを大きくしていくための素晴らしい環境が整っていることに驚かれるでしょう。卒業生は「HBSのウィルスみたいなものに感染し、自分でも起業したくなる」と言っています。2年間仕事を離れる不安を感じることはないと思いますよ。
もうひとつ言えば、HBS も2年間固定されているわけではありません。世界で起こっていることを監視し、それに合わせて常にダイナミックに動いています。HBSは教育のあり方について自問自答しながら、常に新しく進化しているのです。
ビジネススクールに行くことは、現業を離れてベーシックなことを学ぶというイメージを持っている人が多いのは事実です。HBSに行くことは現役を離れるのではなく、世界の最前線に身を置くということですね。
卒業生からは「HBSで学んで人生が変わった」と言われます。なぜなら、ベーシックな部分を教えているわけではなく、学生を人生の「NEXT STAGE」に連れていく教育をしているからです。卒業して10年経った卒業生に聞いても「HBSの学びは本当に役に立っている」と言います。それは、HBSが決して忘れない学びを提供している証拠で、人生を通じて変革を起こし続ける教育を行っている証拠でもあるのです。長く活かせるスキルを身につけたうえで、人との濃密な関係性も手に入れられます。しかもその友人が世界中にいるので、ブラジルでビジネスをしたいと思ったときば、ブラジルの同級生に電話をすればすぐつないでもらえるのです。友情、ビジネス上の信頼関係は、正しい環境でなければ醸成されません。
教育は、効果測定が難しいと思います。どういう人材を生み出すのがHBSの成功と定義されていますか。
HBSのミッションは、世界にインパクトをもたらすリーダーを育成することです。ビジネスはもちろんのこと、それぞれのコミュニティに関与し、責任を持ち、よいインパクトを出し続けられる人材を教育したいと考えています。世の中には数値的に効果測定をする指標がありますが、そこで高いスコアを出すことよりも重要なことがあります。それは、HBSの卒業生が時間とエネルギーを使って、よりよい社会を実現するために、お金とは関係なく動いていることです。それが、HBSの成功と言っていいのかもしれませんね。