フェイスブックはインドのユーザーに対して、ネット環境の整備を国会議員に求めるようニュースフィードで促した。またウーバーは、自社の成長を阻むニューヨーク市の計画にユーザーを巻き込んで反撃した。本記事では、ユーザーに政治行動を促すことが一般化しつつあるテクノロジー企業の潮流を報告する。

 

 フェイスブックのニュースフィードは第一級のデジタル資産であり、その価値の高さは過去に例を見ない。9億6800万人超が日々アクセスし、約15億人が月に最低1度は閲覧している。ここで生まれるトラフィックは、ジャーナリズム、ゲーム、音楽ビジネスを含むさまざまなものを大きく変えてきた。

 2015年8月、フェイスブックはこの資産を政治目的で利用した。インドのユーザーたちはニュースフィードのトップで、Internet.orgへの支持を政治リーダーに示してほしいというフェイスブックからのメッセージを目にした。Internet.orgとは、全世界にインターネットを提供しようという同社の取り組みであり、論争の的にもなっている。

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インドに無料のインターネット基本サービスがあってほしいですか? Internet.orgのミッションは、世界の誰もがインターネットにアクセスできるようにすることです。インドでの無料のインターネット基本サービスに対する支持を表明しませんか。
いまはしない/表明する

 無料ネット接続を全国民に提供するという高潔な目標に同意したユーザーは、フェイスブックが発展途上国で進める計画への支持を、国会議員に意思表示するよう求められた。

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インドのすべての人々をつなぐ取り組みを支持するならば、当社がそれを国会議員に伝えられるようにコメントをお願いします。
「私はインドでのInternet.orgを支持します。#connectindia #connecttheworld」

 Internet.orgは、発展途上国の何十億という人々にインターネット接続を提供することを目指している。これが物議を醸しているのは、フェイスブックの計画における「インターネット」が当初、同社の判断に基づく限定的な「壁に囲まれた庭」だったからだ。いまでは外部の開発者にもオープンとなっているものの、申請が必要となる。そしてInternet.orgのプラットフォームでサポートされるためには、技術面でフェイスブックの定めるルールに従わなければならない。

 フェイスブックは米国の選挙の日にも、選挙情報の提供ツールとしてニュースフィードを利用してきた。フェイスブックが投票行動に及ぼす影響は実証済みであり、その力に危惧を覚える向きもあったが、おおむね杞憂であった。だが今回、フィード内でのInternet.orgのプロモーションは、人々の政治参加を促す通常の行為から一線を超えている。自社の商業的関心に沿う特定の企業活動を支持することで、インド国民の意思表示を後押ししたのだ。