世界の共通言語は、英語とシステム思考?

中竹:システム・マッピング。初めて聞きました。

枝廣:たとえば渋滞を解消したいとしますね。真っ先に思いつきそうなのが車線を増やすことですが、車線を増やすとそのぶん多くの車が通れるようになって、結局また渋滞するかもしれません。でも、たとえば公共交通の魅力が高まると車に乗る人が減って渋滞が減りますよね。バスを一部区間無料にしたり、電車に乗りたくなるサービスを提供したり。

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ループ図

 そうやっていろんな働きかけのポイントをマッピングして、つながりを見ていくと、自分たちでもできそうな、少ない力で大きな効果をもたらす解決策が浮かび上がってくるんです。

中竹:なるほど。このマップをみんなと共有できていると、たとえば今日の練習はここで、前後にはこういうつながりがあって、とか言えるわけですよね。いいな、次からこれ使おうかな。

枝廣:ぜひぜひ。見える化できるっていうのがシステム思考のいいところで、世界の共通語は英語とシステム思考だってよく言っているんですけど(笑)。たとえば貧しい漁村の文字が読めない人たちとだって、システム思考のループ図があれば、文字の代わりに現物とか写真を置いたりして、ちゃんとコミュニケーションがとれるんです。

 企業も同じ。製造は製造、営業は営業、自分たちのレンズを通して物を言うのでぶつかってしまう。でもシステム思考の研修をやると、まず、それぞれの部門から見えている風景をループ図にしてもらうんですね。それで一緒に図を作る。製造はこう見えているけど、営業から見るとこういうつながりがあるよね、みたいな。みんなのループ図になると、じゃあここを変えたらいいっていう話ができるんです。

中竹:みんなのループ図を作る、というのがいいですね。

枝廣:そうなんです。そうすると、部門や個人を責めたりしなくなる。以前システム思考のセミナーをやったとき、旦那さんといつも喧嘩になって悩んでいる女性がいて、一緒にループ図を作ってみたんです。

 すると、そのときは2日間のセミナーだったのですが、次の日に例の彼女がすごい晴れやかな顔をしていて。彼女はループ図を旦那さんに見せて、あなたとはいつも喧嘩ばかりだから何とかしたいと思って、こういうつながりがあるんじゃないかと描いてみたと。そうしたら旦那さんがそれを見て、君はこういう風に思っていたのか、だったら僕はここを変えるよと言ってくれたんですって。